MEDCHEM NEWS Vol.34 No.2
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102AUTHOR参考文献 1) Wang, G.-W., Chem. Soc. Rev., 42, 7668‒7700 (2013) 2) Margetic, D., et al., “Mechanochemical Organic Synthesis” Elsevier, (2016) 学生の頃、Cellを論文紹介のセミナーに選んだ際には、登場するFigureの意味がほとんどわからず、論文を読むのにとてつもない時間がかかった。その後、数年の経験を重ねたが、いまだに見慣れないFigureに出会うことがあり、相変わらず苦労する。生命科学論文に登場するFigureの種類は膨大であり、自身の研究経験のみでカバーするのは非常に困難である。そうした際にFigureの理解を助けてくれるのが本書であり、表紙にもあるようにまさにFigure事典である。 本書のFigureの解説は、統計解析から始まり、核酸、代謝物、タンパク質、細胞等の実験材料ごとの解析手法、さらには網羅的解析、臨床情報解析まで幅広くカバーしている。実際の論文のFigureを題材に、実験原理、図の見方、見る上での注意点、実験材料の項目ごとに要点がまとめられている。1つのFigureにつき、見開き1ページに収まる文章量で羊土社/A5判/288ページ・定価4,950円(税込)(2022年6月刊) 3) Kubota, K., et al., Trends Chem., 2, 1066‒1081 (2020) 4) Seo, T., et al., Chem. Sci., 10, 8202‒8210 (2019) 5) Kubota, K., et al., Nat. Comm,. 10, 111 (2019) 6) Seo, T., et al., J. Am. Chem. Soc., 143, 6165‒6175 (2021) 7) Kubota, K., et al., Science, 366, 1500‒1504 (2019) 8) Takahashi, R., et al., Nat. Commun., 12, 6691 (2021) 9) Gao, P., et al., Angew. Chem. Int. Ed., 61, e202207118 (2022)10) Gao, Y., et al., Angew. Chem. Int. Ed., 62, e202217723 (2023)解説されており、さっと要点を押さえた上でFigureを理解し、まずは論文を読み進めることに集中できる。 論文を読む際に、図表が理解できなくとも著者の言いたいことは本文を読めばわかるが、読者としてその正当性を評価し、正しく理解するには、図表の理解も必須である。こういった読解力は学生であれば論文セミナーで役立つであろうし、ある程度経験を重ねた研究者であれば、自身の研究を進めていく上で参考にすべき論文を選ぶ際のヒントになるし、論文を正しく評価する必要のある査読で役立つであろう。本書が間違いなくその一助となるため、研究に関わる多くの方におすすめする。伊藤肇(いとう はじめ)1996年京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻博士課程(伊藤嘉彦教授)修了。有機ホウ素・有機ケイ素化合物の合成や、機械的刺激に応答する固体有機材料の開発、メカノケミカル有機合成の展開に取り組む。2023年株式会社メカノクロスを創業(同社取締役、技術顧問)。9. おわりに メカノケミカル有機合成の利点は、反応溶媒を大幅に削減できる、高濃度のため反応が大幅に高速化する、有機合成が元来苦手な難溶性化合物も使用可能、金属表面の活性化法として非常に優れている、圧電材料を用いたフォトレドックスの代替などがあげられる。「有機合成には溶媒が必要」というこれまでの思い込みを取り去ることで、多くの新しい発見があった。今後もこの分野の発展が大いに期待できる。Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan吉岡 広大(理化学研究所 田中生体機能合成化学研究室)Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japanはじめて出会う実験&解析法も正しく解釈!生命科学・医学論文をスラスラ読むためのFigure事典実験医学別冊紹介論文図表を読む作法

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