MEDCHEM NEWS Vol.34 No.2
45/64

N2BF4−−N2, BF4−e− +furaneOS+OOSOOOSSOHSO+OH+OOOOON2BF4OB101図8  メカノレドックス反応のコンセプト図7  メカノケミカル条件による高速Birch還元Piezoelectronic Material(BaTiO3)Organic CompoundsAddTightPlayCOOHLi(2.5 equiv)H2N(CH2)2NH2(5.0 equiv)10mL jar(stainless-steel)15mm ball×2(stainless-steel)ball milling(30Hz),rt, in air(closed), 1minMeMe7.0mmol1.05gMechanical ForceElectronTransfer図9  ジアゾニウム塩のメカノレドックス反応の例 芳香族とのカップリング(上図)とジボロンとのカップリング(下図)MeO8.0mmol+e− MeOBaTiO3(5 equiv)MeCN(0.12μL/mg)COOHMeMe98% yieldBaTiO3(5 equiv)ball milling(30Hz)in air, 1hMeOBB43%(NMR)MeO−H+MeO71% yield1.1g体が得られることを明らかにした(図7)。メカノケミカル条件を用いると、これまでの方法に比べて、Birch還元をはるかに簡便に実施できた10)。8. メカノレドックス反応の開発 フォトレドックス触媒を利用した新反応開発は、過去15年ほどで非常に発展を遂げた。この反応では、光触媒を光励起し、一電子移動を誘起することで、これまでは難しかったラジカル駆動型の反応を可能とした。このフォトレドックス反応に関連し、これまでに10000報以上の論文が報告されているが、いくつかの原理的な欠点が存在する。一つは効率的な光照射が容易でなく、大スケール化が容易ではないこと、また反応は希薄溶液が用いられることが多く、このため大量の溶媒が必要で、かつ励起状態のクエンチを防ぐために厳密な脱気が必要である。さらに難溶性基質や着色物質に適用しづらいことが欠点としてあげられる。筆者らは、圧電材料をメカノケミカル条件で使用することで、このフォトレドックス反応のメカノケミカル版である「メカノレドックス反応」の開発を発案した。圧電材料は機械的刺激を与えることで分極が生じ、適当な回路の中では、電流が発生することが知られている。この性質を応用し、適切な基質と圧電材料であるBaTiO3を混合してボールミルで反応させることで、フォトレドックス反応と類似の反応を進行させる(図8)。 実際に、電子を受け取ってラジカルを生じやすいジアゾニウム塩を基質として用い、フランなどのヘテロ環化合物や、ジボロンをカップリング相手として、BaTiO3共存下でボールミルを行うと、BaTiO3の圧電効果によって反応が進行し、それぞれクロスカップリング体、ホウ素化体が得られた。反応はボールミルだけでなく、反応剤を入れたポリ袋をハンマーでたたくことでも進行した(図9)7)。

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る