+NHNNNN3. 鈴木-宮浦反応・Buchwald-Hartwig反応98通常の有機合成・有機溶媒の使用・長い反応時間・難溶性化合物不可・複雑な作業図1 メカノケミカル有機合成の特徴 ボールミル装置(左下)とジャーおよびボール(右下)メカノケミカル有機合成・有機溶媒の削減(<1/10)・反応時間の短縮(<1/10)・難溶性化合物も可・簡便な作業図2 ボールミルによるC-Nクロスカップリング反応(Buchwald-Hartwig反応)5mol % Pd(OAc)25mol % t-Bu3PNa(O-t-Bu)(1.5 equiv)1.5mL jar, 3mm balladditive (0.20μL/mg)milling (30Hz)99min80%Br1.0 equiv71%no additive: 28%with 1,5-cod additive: 99%99%成することが常識となっていた、有機金属反応剤(Grignard試薬など)のボールミルを用いた合成に成功した8〜10)。本稿では、筆者らの研究グループの成果を紹介し、今後の展望について述べる。2. メカノケミカル有機合成の基礎 通常の有機合成反応とは異なり、メカノケミカル有機合成では、ボールミルと呼ばれる装置を用いる。これらは鉱石や食品などを粉体にしてサンプルをつくるための装置である。ボールミル装置には、振動ボールミル、遊星ボールミル、ディスクミルなど多くの種類がある。メカノケミカル法は、無機化学では標準的な手法であるが、有機合成への本格的な応用はごく最近注目されている。ボールミルを用いた有機合成反応では、基質に対して10%重量程度の少量の溶媒を添加すると反応がうまくいくことが多く、これをLAG(Liquid Assisted Grinding)と呼ぶ。ボールミルの材質は、ステンレス、めのう、ジルコニア、タングステンカーバイド、テフロンなどが知られている。素材によって、ボールミルによる基質への衝撃力や攪拌効率が異なる。振動ボールミルや遊星ボールミルの場合は、それぞれ振動数や回転数の増加に対応して、基質への機械的な力のかかり方が変化する。また、ボールの大きさや数も反応に大きく影響する。既存のボールミル装置で反応温度を調整することは難しいが、一部の装置では可能である。メカノケミカル有機合成を成功させるためには、これらのパラメーターを最適化する必要があり、旧来の溶液系反応とは若干異なるノウハウが存在する。 クロスカップリング反応は、製薬分野で多用される非常に重要な反応である。筆者らは手始めに、ボールミルを用いてクロスカップリング反応のテストを行ったところ、触媒が失活して反応が停止することがわかった。そこでボールミルでも反応が効率よく進行するような条件を探索したところ、1,5-codの添加により触媒の失活が抑えられることが明らかになった(図2)5)。この反応条件を用いると、幅広い基質に対してボールミル反応を適用することが可能になった。反応後のSEMおよび固体NMR観察によって、1,5-codの添加が、Pd(0)活性種の分解と凝集を抑制していることが明らかになった。 1,5-codの添加は、鈴木-宮浦反応・Buchwald-Hartwig反応のどちらにも有効であった4〜6)。多くの場
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