MEDCHEM NEWS Vol.34 No.2
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92AUTHOR同 年 スクリプス研究所化学科博士研究員2013年 九州大学大学院薬学研究院特任助教2016年 九州大学大学院薬学研究院助教2023年 北海道大学大学院薬学研究院特任助教同年10月より現職したことから、Hsp90の不可逆的な阻害が示唆された。また、詳細は割愛するが、27と対応するアルキンプローブ28を用いたプロテオミクス解析により、CNS化合物が生細胞内のHsp90を高選択的にラベル化したことを明らかにした。27と精製Hsp90-NTDの複合体のX線結晶構造解析では、CNS部位とLys58側鎖との間に連続的な電子密度が見られ、想定どおりの共有結合形成が確認された(図3D)。 CNSのアミン反応性には分子内環化が必須であり、N,N-ジアルキルスルホンアミドでは環化が起こらず不活性である。これを利用すれば、アルキル保護基によってCNSのアミン反応性をOFFとし、光や酵素反応による脱保護で反応性をONにする戦略が可能となる。そこで、28に光分解性保護基を導入した29を合成し、生細胞の蛍光ラベル化を行った(図3E)。結果、29自体はプロテオーム反応性を示さなかったが、UVを照射(365nm, 10min)したサンプルではHsp90の蛍光バンドが観察された。光脱保護の効率にはまだ改善の余地を残すが、保護基でOFF/ON制御可能なアミン反応基としての、CNSの有用性を示す結果であると考えている。5. おわりに リジン残基を狙うことでコバレントドラッグ創薬の標的拡張が期待できるが、生体内での高い安定性と化学選択性を兼ね備えたアミン反応基はまれである。本稿で紹介したCNSは、環鎖互変異性と環化体のプロトン化を進藤直哉(しんどう なおや)2008年 東北大学大学院薬学研究科修士課程修了2011年 京都大学大学院薬学研究科博士後期課程修了 田中雄大(たなか ゆうだい)2022年 九州大学薬学部創薬科学科卒業2024年 九州大学大学院薬学府創薬科学専攻修士課程修了同年4月より九州大学大学院薬学府博士後期課程大学院生博士(薬学)参考文献 1) Fleming F.F., et al., J. Med. Chem., 53, 7902‒7917 (2010) 2) Keyser S.G.L., et al., J. Org. Chem., 83, 7467‒7479 (2018) 3) Smith P.A., et al., Nature, 561, 189‒194 (2018) 4) Dahal U.P., et al., Med. Chem. Commun., 7, 864‒872 (2016) 5) Hunter M.J., et al., J. Am. Chem. Soc., 84, 3491‒3504 (1962) 6) Cignarella G., et al., J. Am. Chem. Soc., 82, 1594‒1596 (1960) 7) Balode D.É., et al., Chem. Heterocyclic Cmpds., 14, 1326‒1328 (1978) 8) Tamura T., et al., Nat. Commun., 9, 1870 (2018) 9) Cuesta A., et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 3392‒3400 (2020)経る新規な機構でアミンと反応し、高い水中安定性や化学選択性など、優れた化学プロファイルを示した。CNSを有するPU-H71誘導体は、生細胞内でHsp90の高選択的かつ不可逆的な阻害を達成し、リジン標的コバレントドラッグ創薬におけるCNSの有用性が実証された。また、他のアミン反応基にはないCNSの特徴として、スルホンアミド窒素の保護基による反応性のOFF/ON制御が可能であり、特定の酵素活性を有する腫瘍のターゲティングなど、今後の幅広い応用が期待される。謝辞 本研究のX線結晶構造解析では、北海道大学大学院薬学研究院 前仲勝実教授、喜多俊介助教にご助力を賜りました。また、プロテオミクス解析は名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 三城恵美講師、加納圭子氏に実施していただきました。すべての共同研究者の皆様に心より感謝いたします。谷川敦哉(たにがわ あつや)2023年 九州大学薬学部創薬科学科卒業2024年 九州大学大学院薬学府創薬科学専攻修士課程大王子田彰夫(おうじだ あきお)1992年 九州大学大学院薬学研究科修士課程修了1995年 九州大学大学院薬学研究科博士後期課程修了 学院生博士(薬学)同 年 分子科学研究所非常勤研究員1997年 武田薬品工業株式会社創薬研究本部研究員2001年 九州大学大学院工学研究院助手2005年 京都大学大学院工学研究科助手2007年 京都大学大学院工学研究科講師2010年より現職Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan

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