MEDCHEM NEWS Vol.34 No.2
26/64

(Hydrophobic)1分子酵素活性検出(Hydrophobic)82水溶性官能基を付与した蛍光団HCCAを用いたALP活性のFigure 2  1分子酵素活性計測技術に適した水溶性を高めた蛍光プローブの開発 脂溶性の高い材質で構成されるマイクロデバイスを用いたアッセイに適した水溶性官能基を付与した蛍光プローブ(右:HCCA-Phos)を用いることで、従来の蛍光プローブ(左:4MU-Phos)と比較してより明確にALPの1分子酵素活性を検出することが可能になった。4MU-PhosHCCA-PhosPDMSCYTOPGlass(Hydrophilic)Nat. Commun. 2014, 5, 4519Flush Oilでに1分子レベルの機能解析が行われたタンパク質の例はそこまで多くはない。酵素の1分子活性検出においては、数十fLレベルの微小な反応容器が10万〜100万個並列したマイクロチャンバー型のデバイスに、希釈したタンパク質溶液をロードしオイルで封入することで、確率的に0または1分子の目的タンパク質がチャンバー内に含まれる条件を構築して酵素活性計測を行う1分子 酵素活性計測系が開発されている12,13)。しかし、これ までの研究で活性計測の実例が報告されているのは、alkaline phosphatase(ALP)、glycosidasesなどの限られた酵素群についてのみであった。 本法の適用酵素群が限られていた理由の一つとして、マイクロデバイス中の酵素活性を検出することを可能とする蛍光プローブ分子が十分に開発されていなかったことがあげられる。マイクロデバイスの多くは脂溶性が高い材質でつくられ、オイルを用いてチャンバーを封入するという性質上、脂溶性の高い蛍光色素は容易に系外に漏出してしまう。本共同研究のスタートとなったのは、このようなマイクロデバイスを用いた1分子活性検出 に用いられている既存の蛍光プローブの水溶性を高め た新たな蛍光プローブを開発することで、計測の精度 を高めるという非常にシンプルなものであった。既存 の蛍光プローブである4-methylumbelliferoneを母核とした青色蛍光プローブに対してカルボン酸を導入した7-hydroxycoumarin 3-carboxylic acidを新たな母核として、リン酸エステル化した蛍光プローブを合成して1分子計測系に用いたところ、非常に高いシグナル強度をもってマイクロデバイス中のALP活性を検出することが可能となった(Figure 2)14)。 ALP活性を精度よく1分子検出する系が確立できたことを受けて、この知見を一般化し、生体サンプル中のさまざまな酵素活性を網羅的に解析するenzymomics法へと適用することを考えた。特に、上記のように、血液中などの体液中のタンパク質機能解析において本法は高いポテンシャルを有すると考えられたが、これまでに 1分子酵素活性計測系を用いて血液中のタンパク質機能を解析したという例は報告がなかった。これは、上記のプローブ開発不足の問題に加え、生体サンプル中には既知/未知の類似の活性を有するものも含めて非常に多様なタンパク質が含まれる中で、確率的にチャンバー内にロードされる個々のタンパク質分子を同定、区別して検出することができないことが大きな問題点であった。これに対し、筆者らは、マイクロデバイス中に分離される1分子レベルの酵素を種々の蛍光性基質に対する反応性の違いによって見分けることで機能的に分離して数えるという方法論を考案し、これによって、血液中に存在す

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る