MEDCHEM NEWS Vol.34 No.2
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1分子レベルの機能解析技術を用いることで、翻訳後修飾、タンパク質間相互作用などによって異なる状態にあるproteoformレベルの機能変化を記述することが可能になると期待される。ycneuqerFycneuqerFMeMeMeMeMeMe81「多」のタンパク質機能解析(従来)106〜109分子(attomol-fmol)を1つの集団として扱うため、得られる情報に限度がある「個」のタンパク質機能解析1分子ずつのタンパク質(proteoform)の機能を反映した深度のあるデータを与えるCentral DogmaDNAFigure 1  タンパク質の「個」に着目した機能解析 Epigenetic factorsAlternative splicingmRNAEnzymesProtein-protein interactionsPosttranslational modificationsPiPiAcMeMePiMeAcProteoformsPhenotypesパク質機能の理解を可能にする新たな方法論の開発が待たれている。 筆者らは、タンパク質の中でも酵素の活性を網羅的に検出することで、特に疾患と関わる酵素活性の異常を見出すことを目指す「enzymomics(enzymeのomics)」研究を進めてきた5〜9)。これは、表現型に直結するタンパク質の機能異常に関する有用な情報を与え得るものであるが、近年になって、酵素活性検出に基づく疾患診断技術はactivity-based diagnosisと呼ばれ、他のモダリティーで検出することが難しい疾患関連のタンパク質機能異常に基づいて疾患を理解し検出する有用な方法論として発展が期待されている10)。一方で、既存の分光学的手法に基づく酵素活性計測技術は、高感度の蛍光性基質である蛍光プローブを用いた場合にも0.1ng/mL程度が検出限界となる。これ以下の濃度のタンパク質の機能を解析することや、proteoformとして異なる分子種を区別した際のより少ないポピュレーションのタンパク質の活性を評価する目的において、さらなる高感度化、高精度化が望まれる状況であった。特に、血液などの体液中に含まれる生体分子の検出に基づいて疾患の診断を行うリキッドバイオプシー法においては、疾患由来の組織、細胞から放出、遊離する標的タンパク質は5Lもの血液中に薄められた状態で存在しており、組織、細胞内でのタンパク質検出と比較しても微小量の標的タンパク質を相手にすることが多い。加えて、精度の高い診断のためには、血液中にさまざまな臓器由来の類似の分子種が存在する中で目的のタンパク質分子を選択的に検出することが求められ、タンパク質機能検出の高感度化、高精度化は必須の課題であるといえる。 これに対し、筆者らの研究グループは、血液中に含まれるタンパク質を1分子というタンパク質が機能を発揮する理論上の最小レベルの単位において網羅的に機能解析を行う方法論を開発し、疾患と関わるタンパク質の機能異常を高感度、高精度の解析によって見出すことを目指した研究に取り組んできた(Figure 1)。2. 血液中の酵素活性の1分子検出系の構築 生体サンプル中の1分子レベルのタンパク質機能を解析する1分子計測技術は、2000年前後から大きく発展を遂げてきた研究分野である11)。タンパク質の検出感度は計測系に1分子が捕捉される確率に支配されるものの、一般的には既存の分光学的手法よりも高い感度が得られ、分子の個性を記述することができる点でproteoformレベルのタンパク質機能解析に適する優れたポテンシャルを有する技術であるといえる。しかしながら、これま

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