52写真1 白熱するポスター討議写真2 懇親会の賑わい 第40回メディシナルケミストリーシンポジウム(MCS2023)が、2023年11月13日(月)から15日(水)に、名古屋大学 豊田講堂で開催されました。今回は4年ぶりの対面開催ということで、実行委員一同知恵を結集して準備を進めて参りましたが、お蔭様で、製薬企業や大学からの参加528名に機器展出展企業(36社)の方々を加え、総勢600名以上の方々で会場は大変な賑わいとなり、最新の研究成果に関する熱のこもった発表と活発な討論が繰り広げられました(写真1)。懇親会も盛況 で、220余名の方々が、東海地方の銘酒や料理を味わいながら、旧交を温め、新たな交流の輪も広がりました(写真2)。また、機器展スタンプラリーの景品には、岐阜県にちなんだお土産や鮎菓子を準備し、楽しんでいただきました。ご参加いただきましたすべての皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。 今回は、「創薬化学の広がりと深化」をテーマに掲げ、海外からの招待者2名を含む9名の先生方による招待講演、特別企画講演9件、医薬化学部会賞受賞講演2件、一般口頭発表8件、ポスター169件の発表が行われました。招待講演では、Darren Engers博士(Vanderbilt大)から、運動障害、統合失調症など中枢神経系疾患に対するアカデミア創薬の成功事例が紹介されました。阿部洋先生(名大理)から、注目のmRNA医薬の基盤となる新しい化学合成技術について、周東智先生(北大薬)からは、シクロプロパンの構造特性を生かした三次元多様性分子設計法の開発と中分子創薬への展開について報告されました。榎本篤先生(名大医)から、合成レチノイドAm80によってがん関連線維芽細胞の性質を変えることにより、抗がん剤の効果を増強させる技術が紹介されました。小出和則先生(Pittsburgh大)は、液安を用いず安全な、有用性の高いスケーラブルBirch還元反応について、二木史朗先生(京大化研)は、抗体・機能性タンパク質の、液滴(またはコアセルベート)を介した斬新な細胞内導入法について、また菅裕明先生(東大理)は、マルチ特異性を有するネオバイオロジクス創製について発表されました。企業からは、飯嶋徹先生(田辺三菱製薬・東大創薬機構)の次世代レニン阻害剤SPH3127の創製、生越洋介先生(日本たばこ産業)のHIF-prolyl hydroxylase阻害活性を有する腎性貧血治療薬 エナロデュスタットの創製に関する発表があり、メドケムの醍醐味を伝えていただきました。 2022年度に引き続き、創薬ニューフロンティア検討会の「つながり醸成企画」では、話題のタンパク質分解創薬に焦点があてられ、「高校生ポスター」では、2度目の参加の奈良女子大学付属中等教育学校に加え、新たに岐阜高校からも発表があり、今回も好評を博しました。新たに、若手実行委員による次世代企画として、創薬エコシステム構築に資する多彩な創薬ベンチャーの独創的新技術が紹介されました。 また、医薬化学部会部会賞を受賞された山元康王先生(田辺三菱製薬)からは選択的メラノコルチン1受容体作動薬の経口剤MT-7117の創製、小松徹先生(東大薬)からはアカデミアベンチャーにおける独創的な疾患診断技術の開発について、次に続く創製化学者への示唆に富んだ講演が行われました。 ご講演いただきました先生方、ならびに一般口頭発表・ポスター発表を行っていただいた先生方に感謝を申し上げます。最終日には医薬化学部会部会賞をはじめとする各賞の表彰式が執り行われ、激戦をくぐり抜けた以下の研究が受賞されました。今後のさらなる研究の発展を祈念いたします。◦医薬化学部会賞受賞1. 「MC1R作動薬MT-7117(dersimelagon phosphoric acid)の創製」山元康王 他(田辺三菱製薬)(写真3)2. 「1分子レベルのタンパク質機能検出による疾患診断技術の開発」小松徹 他(東大院薬、理化学研究所、日医大、コウソミル株式会社)(写真4)◦医薬化学部会MCS優秀賞1. 「非ペプチド性経口RXFP1作動薬AZD5462の創製」淵上龍一 他(田辺三菱製薬、AstraZeneca)2. 「細胞内標的に対する経口投与可能なペプチド阻害剤の開発:ヒット化合物から臨床KRAS阻害剤までの構造最適化研究」棚田幹將 他(中外製薬)3. 「新規Keap1/Nrf2タンパク質間相互作用(PPI)阻害薬の創製 ~小さな置換基の大きなインパクト~」原田一人 他記事「第40回メディシナルケミストリーシンポジウム」開催報告
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