MEDCHEMNEWSVol34No1
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NHNHNOONNONOONNOSNHONNNNNNH3. The 28th Annual Meeting of the RNA cf.)Ribocil-CKD: 10.7 nMKD: 11.4 nMHGC-1HNOHKD: 15.0 nMHGC-2HNOH49図1  HitGenのDELスクリーニングで見出されたFMN Riboswitch binders筆者はアッセイとスクリーニング系のセッションを選んだ。後半2日間は広い部屋に全員で参加する。ちなみにボストンでは学会前々日に初雪が降っていたため、泊まったホテルから学会会場までフードを被って通う寒さであった。 具体的な標的名が開示されヒット化合物の取得に至っていた例として、Remix Therapeutics社のMYB-NFIB融合遺伝子のプロジェクトがあった。MYB-NFIBは腺様嚢胞がんの主要ドライバーである。彼らは、複数の標的のスプライシング変化を検出できるREMseqという独自の細胞系のスクリーニングにより、MYB-NFIBに選択性高くpoison exonを生じさせ、RNA分解を誘導するヒット化合物を取得した。このヒットから合成展開した化合物で、XenograftモデルでMYB mRNAとタンパク質の発現低下を確認し、Patient Derived Xenograft(PDX)モデルに1日1回経口投与して腫瘍の退縮まで確認した。 特定のRNA部分配列に対するbinderの取得を志向したスクリーニングに関する演題も多かった。なかでも、HitGen社とWuXi AppTec社がそれぞれ独自に確立したRNA標的用のDNA-Encoded Library(DEL)プラットフォーム技術が興味深かった。両社とも、二本鎖DNAの一方にライブラリ化合物が、他方にUnique Molecular Identifier(UMI)配列を含む一本鎖DNAがつながったデザインに辿り着いていたが、この一本鎖DNA部分が標的RNAと結合してしまうことが課題であった。この課題に対し、HitGen社では標的RNAを断片化した“RNA patch”を、WuXi社では“Zipper protein”を系中に添 加しておくことで解決できることを見出した。図1は、HitGen社が彼らのDELスクリーニングで獲得したFMNリボスイッチに対するbinderである2)。Merck社が2015年に発表したRibocil-Cとまったく異なる骨格であり、ITCなどで同等の結合親和性があることを確認した。 RNAに対するbinderを取得できても、必ずしも細胞での機能に結びつくわけではない。本学会をとおして、この“silent binder”に関してコメントする演者は多かった。一つの解決策として、Scripps ResearchのDisneyらが発表したRIBOTACがあげられる。RNAに対するbinderとRNase Lのリクルーターをリンカーで結合した化合物により標的RNAの分解を誘導するアイデアだ。Amgen社ではこのアイデアを発展させ、物理的に近づいた場合に、より効率的にRNAを分解できる酵素を社内で探索した。独自に見出したRNA分解酵素に対する低分子binderもHTSにより獲得しており、Arrakis Therapeutics社との共同研究中のRNA binderとリンカーでつなげることで、新たにRNATACと命名してプラットフォーム化したいと考えているとのことだ。Society 一方、2023年5月30日から6月4日までシンガポールで開催されたAnnual Meeting of RNA Societyは、歴史ある大規模な学会で、この回も約1,000名が参加し、114の講演と500以上のポスター発表があった。学会会場のサンテック・シンガポール国際会議展示場(写真2)は国の中心地にあり、3つの部屋を使って複数のセッションが同時並行で進められた。低分子創薬にフォーカスしているわけではないため、mRNAワクチンやAAVへの応用を意識した発表、スプライシングや翻訳の機構、RNAと生命の起源に迫る基礎研究など、非常に幅広い範囲を扱う。理解するのが大変だが、今回は各セッションの最初に座長が発表者全員分のoverviewを話す取り決めがあったおかげで、個々の研究の位置づけを把握することができた。 初日のKeynote lecturesのあと徒歩で移動し、有名な観光スポットであるFlower Gardenでおしゃれなレセプションが行われた(写真3)。筆者ははじめてのシンガポールで、学会前後にバクテーやラクサなどの本場の料理を堪能できたのも良い思い出である。移動にはタク

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