>三重らせんCNTHNGNHNANNONNNNOONNO<②スタッキング相互作用図3 核酸構造を規定する5つの駆動力(相互作用)様式①水素結合③構造エントロピー枝分かれ図4 試験管内の希薄溶液環境(上)と細胞内の分子夾雑環境(下)における核酸構造の模式図ΔGº標準構造ΔGº非標準構造ΔGº標準構造ΔGº非標準構造試験管内希薄溶液環境(標準構造が非標準構造よりも安定)細胞内分子夾雑環境(標準構造が非標準構造よりも不安定)四重らせん(G-quadruplex)ヘアピンループ四重らせん(i-motif)④溶媒和(水和)⑤対イオン濃縮枝分かれΔnNa+NH2NH2H2N4.3 ÅssDNAdsDNAb=1.7 Å38方、④と⑤は分子環境によって左右される。これまで試験管内で生命現象を解析する実験においては、100~1000mM NaClまたはKClを含む希薄溶液が用いられてきた。しかし、このような標準水溶液での生命分子の挙動は、細胞内における生命分子の挙動と一致しないことが多い。これは、上記の④と⑤の因子が生命分子の挙動や機能を決定するために重要な役割を担っていることを示唆している。 筆者らは、このような夾雑環境下における核酸の挙動について、物理化学的観点から検討してきた5)。溶解性が高く、分子量を系統的に変化させることが可能であり、かつ生体分子と特異的な相互作用を形成する可能性の低い、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて、分子夾雑環境を試験管内で再現し、種々の核酸鎖が形成する構造とその熱力学的安定性に及ぼす効果を定量してきた。その結果、核酸の標準構造である二重らせん構造は、分子夾雑環境下で不安定化することがわかった。この結果とは対照的に、核酸の代表的な非標準構造である四重らせん構造(詳しくは後述)は分子夾雑環境によって安定化することが示された6)。さらに、核酸の三重らせん構造、枝分かれ構造、i-motif構造(図4下)などの非標準構造も分子夾雑環境により熱力学的に安定化するこ
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