MEDCHEMNEWSVol34No1
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門之園哲哉企画35AUTHOR 2) Stockwell B.R., Cell, 185, 2401‒2421 (2022) 3) Zheng J., et al., Cell Metab., 32, 920‒937 (2020) 4) Yamada K., et al., Nat. Chem. Biol., 12, 608‒613 (2016) 5) Matsuoka Y., et al., Anal. Chem., 92, 6993‒7002 (2020) 6) Udo T., et al., Anal. Chem., 95, 4585‒4591 (2023) 7) Matsuoka Y., et al., Nat. Commun., 12, 6339 (2021) 8) Saito K., et al., Redox Exp. Med., e220024 (2023) 9) Yoshida Y., et al., Free Radic. Res., 37, 861‒872 (2003)10) Bagryanskaya E.G., et al., Chem. Rev., 114, 5011‒5056 (2014) 近年、創薬の現場では創薬技術や治療手段を指す概念として「創薬モダリティ」という言葉が汎用されており、多様な創薬モダリティとして、低分子、天然物、中分子、バイオロジクス(バイオ医薬、高分子医薬)、核酸、細胞・再生医療などが知られている。低分子とバイオロジクスの中間に位置付けられる中分子の中で、ペプチド医薬は次世代の創薬モダリティとして特に注目されているが、本書はペプチド医薬の技術革新と進化(深化)を体系的に理解するうえで必読の良書である。 本書には、時系列的なペプチド創薬の技術革新についての概要から始まり、生理活性ペプチドからの創薬、mRNAディスプレイによる特殊環状ペプチドライブラリーの構築とシード探索、インフォマティクス技術、ペプトイド、がん光免疫療法におけるキャリアとしての中分子ペプチドの活用について記載されている。さらに、マイクロフロー合成を活用した脂質ラジカル 多価不飽和脂肪酸は、活性メチレン部位を含む。この活性メチレンの水素原子は、活性酸素などにより容易に引き抜かれ、炭素中心ラジカルである脂質由来ラジカル(L•)を生成する。この脂質由来ラジカルは、酸素分子との反応により脂質ペルオキシルラジカル(LOO•)を、また、脂質ペルオキシルラジカルは、周囲の不飽和脂肪酸から水素原子を引き抜き、脂質ペルオキシド(LOOH)と脂質ラジカルが生成される。これが、脂質過酸化連鎖反応である。いったん生成したLOOHは、生体内に存在する鉄などの金属とも反応し、LOO•やアルコキシルラジカル(LO•)などとなり、連鎖反応がさらに伝幡する。今回は、このL•、LOO•、LO•を総称して「脂質ラジカル」とした。 羊土社/B5判/137ページ・定価2,530円(税込)(2022年12月)ペプチド供給技術、ドラッグデリバリーシステムとしてのマイクロニードルや吸収促進剤のペプチドへの活用、ペプチド医薬品におけるガイドライン整備まで、ペプチド創薬における最新の研究結果がバランス良くまとめられている。 従来のペプチド医薬とは異なり、現在の中分子ペプチド医薬に対する期待は、低分子医薬のように細胞膜を透過し(そのような分子を論理的に計算予測し)、細胞内の標的に対して抗体のように特異的に結合して作用することにある。本書をきっかけとしてさらなる先進技術が開発され、タフターゲットに対する新しい挑戦から革新的なペプチド医薬が生まれることを期待したい。山田健一(やまだ けんいち)1999年 九州大学大学院薬学研究科博士課程修了 博士(薬学)1999年~2002年 NCI-NIH博士研究員2002年 九州大学大学院薬学研究院助手2005年 同助教授(後に准教授)2013年~2017年 JSTさきがけ(疾患代謝)研究代表者2016年 九州大学大学院薬学研究院教授2017年~2023年 AMED-CREST(脂質)研究開発代表者現在に至る山田健一(九州大学大学院薬学研究院)Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan岡 裕輔(大正製薬株式会社)Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan用語解説紹介実験医学 特集中分子ペプチド医薬で新たな標的を狙う!!新章を迎えた創薬モダリティ

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