MEDCHEMNEWSVol34No1
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)mμs()mμs(senkchTLNOnaeMsenkchTLNOnaeM−i 0i 05. 光誘発性網膜障害モデルへの応用6. おわりに**経口投与図4  網膜障害モデルにおける化合物Xの保護効果網膜障害+X経口投与**点眼[化合物X]+X点眼######light+0.45+0.75+1.00%Control70##35controllight+100+200[化合物X]##7035controlμmol/kg**p<0.01 v.s. ctrl, ##p<0.01 v.s. light34ヒット上位化合物が、確かに脂質ラジカル阻害能を有していること、さらに今回選択した疾患の発症・進展に脂質ラジカルが強く関与していることを客観的に示すものでもある。 次に、今回の方法論を検証するために、これらスクリーニング上位化合物が、実際に疾患モデル動物に対して発症進行抑制効果を示すのかどうかを評価した。そのためのターゲット臓器として、PUFAが豊富で酸素消費量が多い網膜を選択した。事実、加齢黄斑変性疾患患者や光誘発性網膜障害モデル動物の網膜中では、脂質過酸化反応産物が蓄積している。 今回は、FDAライブラリーの結果から、既承認薬 5種類を選択し、光誘発性網膜障害モデルに対する効果を評価した。その結果、5種類の薬剤を同量、腹腔内投与すると、いずれの薬剤も網膜保護効果を示した。これら5種の薬剤は、本来それぞれ異なる薬理学的作用点を有しているにも関わらず、いずれも同様に網膜保護効果を示した。このことは、光照射網膜障害モデル動物において脂質ラジカルが適切なターゲットであるとともに、開発したスクリーニング系の有用性をさらに示すものでもある。 次に、これら5種の薬剤の中から、筆者らは、臨床で用いる投与量の安全領域が比較的広く眼底(や皮膚)に対する副作用が報告されていない化合物Xをリパーパ参考文献 1) Dixon S.J., et al., Cell, 149, 1060‒1072 (2012)シング候補化合物として選択した。化合物Xの経口および点眼投与は、光照射モデルマウスの網膜の厚みの減少を用量依存的に抑制した(図4)。さらに、網膜の機能測定である網膜電図の減弱、網膜障害時のTUNEL陽性細胞の増加、補体系活性化などを顕著に抑制した。 以上の結果から、化合物Xは、光誘発性網膜障害、今回記載していないがその他の疾患モデルでも有効な効果を示し、疾患モデル動物の病態発症・進展において脂質ラジカルが起点となり得る可能性が示された。 今回、筆者らはまず、脂質過酸化反応の起点である脂質ラジカルや酸化脂質の検出・構造解析技術を開発し た。次に脂質ラジカルに対する阻害剤探索のために、信頼性、再現性、ハイスループットなスクリーニング系を構築し、実際に疾患モデル動物の発症・進展に対して保護効果を示す化合物Xを見出した。また、本スクリーニング系で見出した既承認薬のヒット化合物の多くは、すでに論文に報告されているものもあった。しかし、これら論文内では、酸化脂質の疾患への関与に言及していないものがほとんどである。このことは、疾患への酸化脂質、脂質過酸化反応の関与、あるいは創薬研究の展開を進めるうえで、新たな知見となるであろう。

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