1イセッアライブラリー化合物検出プローブNBD-TEEPO競合反応酸化脂質図3 RTA探索のための化合物スクリーニング系検出プローブとライブラリー化合物との競合反応にて候補となる化合物を選別。1.00.80.60.40.20.00.20.40.6アッセイ20.900.850.800.70.80.80110.9化合物X33もある。実際に、脂質由来ラジカルを標的とした阻害剤が、ラジカル捕捉型抗酸化剤(RTA)とも呼ばれ、盛んに研究が進められている。 では、脂質ラジカルをターゲットとした理想的な化合物スクリーニング系には、どのような要件が必要であろうか。それは、脂質ラジカルに対する高い反応選択性および大きな二次反応速度定数、かつ、脂質ラジカルが生成する環境を模倣することであろう。実際の実験では、脂質ラジカルに対するスクリーニング化合物と脂質ラジカル検出プローブとの競合反応が想定されるため、検出プローブが脂質ラジカルに対して大きな二次反応速度定数を有することは必須である。そうでなければ、膨大な数のスクリーニング化合物の中から、候補となる高反応性分子を絞り込むことはできない。C11-BodipyとROO・との二次反応速度定数は6.0×103 M-1s-1であり9)、これまで報告されているニトロキシドと炭素中心ラジカルとの反応速度定数は108-9 M-1s-1である10)。その他、スクリーニングには、信頼性、再現性、ハイスループットであることも求められる。 脂質ラジカル阻害剤を効率的に探索するには、検出プローブとライブラリー化合物との脂質ラジカルに対する競合反応の利用が最も有効であろう。そのためには、①ライブラリー化合物がプローブと直接反応して偽陰性(蛍光発光)を示さないこと、②検出プローブと脂質ラジカルとの反応性が十分速いこと、が必須条件となる。そこで、筆者らは、最終的に2,2,6,6-tetraethyl-4-(4-nitrobenzo[1,2,5]oxadiazol-7-ylamino)piperidine-1-oxyl(NBD-TEEPO)を合成し、脂質ラジカルとライブラリー化合物との競合反応を利用することで、脂質ラジカル阻害剤の効率的な探索法を開発した(図3)。 実際に、96あるいは384プレートを用いてFDA既承認薬ライブラリー化合物、Prestwick chemical library化合物などを用いて評価したところ、高い脂質ラジカ ル抑制作用能を有する複数の化合物がリストアップさ れた。これらのヒット化合物の中にはdisulfiram、minocycline、indapamideなど、すでに酸化脂質生成抑制作用が報告される化合物が複数含まれていた。そこで、これら阻害効果の高い化合物をヒット化合物とし、それらに対して、虚血再灌流障害、脳梗塞モデル、ア ルツハイマー病など、酸化ストレスの関与が想定され る疾患に対して抑制効果が報告されているかどうか、pubmed検索した。その結果、本スクリーニング系で高活性を示した化合物が心臓、腎臓・網膜の虚血再灌流モデルに対して、また別の化合物は脳梗塞モデルにおいて保護効果を示すことが報告されていた。また、筆者らが以前報告した急性腎障害でのフェロトーシス阻害剤としてのrifampicin、promethazine、またdoxorubicin心筋症モデルに対するethoxyquinも高い脂質ラジカル阻害活性を示した。これまで、これら抗酸化能を有する化合物探索は、研究者の経験や、抗酸化能が既知の化合物群およびその骨格に基づく化学合成、さらに従来法の化合物スクリーニング系から候補薬剤を選択し、疾患モデル動物や臨床試験での検討が進められてきた。しかし、今回構築した化合物スクリーニング系は、脂質ラジカルと非常に速い反応速度を有する蛍光プローブを利用した競合反応を原理としており、候補となり得る化合物を比較的簡便に、ノンバイアスで絞り込むことを可能とした。興味深いことに、本来異なる薬理作用を有する薬剤が、同一の疾患モデル動物に対して保護効果を示す複数の報告が存在していた。このことは、これらスクリーニング
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