MEDCHEMNEWSVol34No1
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保持時間.tI .t.tI I R1R1R1R2R1SMR3R2R3R2R3SMSM•C9H15O•C5H11β-切断A)NBD-Penは脂質由来ラジカルと反応し、安定なアダクトを形成する。B)LC-MSにて質量分析を行うことで、結合した脂質由来ラジカルの質量情報を取得できる。C)脂質由来ラジカルとしての断片化脂質ラジカルの生成様式。ω6およびω3系によって、生成する断片化脂質ラジカルの分子量は異なる。3. 酸化リン脂質の構造ライブラリーと 2. 脂質ラジカル検出プローブR1ω6系R1ω3系脂質ラジカル検出脂質ラジカル断片化脂質ラジカルの生成様式図1  脂質ラジカル検出プローブとHPLC蛍光検出質量分析システムによる不飽和脂肪酸由来ラジカルの構造解析Fe2+Fe2+•C5H9蛍光プローブ−脂質ラジカルアダクトHPLCにて分離蛍光強度ABCOOOORR RRnnnRROOω6系OOω3系ジオキセタン開裂質量分析にて構造解析質量電荷比NBD-PenBodipy-PenR1OOOOOOOO•C9H13O31 そこで、筆者らは、まず、脂質過酸化連鎖反応の中心である脂質ラジカルを検出するプローブを開発した。そして、実際に、溶液中でも安定な不対電子を分子内に有するニトロキシドと、ニトロキシド内の不対電子と蛍光団との相互作用を利用することで、脂質ラジカルと反応すると蛍光がONになる蛍光プローブNBD-Penを開発した(図1)4)。このプローブは、一般的な活性酸素とは反応せず、また環境応答性の蛍光団を利用している点も特徴である。さらに、NBD-Penは、脂質ラジカルとラジカル-ラジカル反応にて共有結合できることから、結合した脂質ラジカルの構造を解析できる。実際に、これまで132種類の脂質ラジカルの検出が可能であった5,6)。加えて、検出した脂質ラジカルの構造から、脂質過酸化反応の開裂パターンや基質となった脂肪酸の種類(ω3あるいはω6)を推定することも可能となっている。また、実際に、疾患モデル動物での脂質ラジカルの検出・構造解析、ならびに組織切片中での蛍光イメージングも可能であった。さらに、このNBD-PenあるいはNBDを外したニトロキシド基のみでも、疾患の発症を抑制できている。 次に、脂質由来ラジカルの検出および構造解析が可 能となったことから、その反応生成物である酸化脂質 の解析を進めた。研究開発当時、脂質データベースLIPIDMAPS(www.lipidmaps.org/)に登録されている酸化ホスファチジルコリン(oxPCs)は53種類であった。しかし、中間体である脂質由来ラジカルの数から考えても、この数は、予想よりもはるかに少ない。そこで筆者らは、質量分析によるノンターゲット分析技術を用いて、酸化脂質の構造解析を行った。その結果、3種類の不飽和脂肪酸を含むPC16:0/PUFAに由来するPC由疾患モデル動物への応用

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