MEDCHEMNEWSVol34No1
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2. 9CN-rhodolと9CN-pyroninの 〔SUMMARY〕1.はじめに20MEDCHEM NEWS 34(1)20-24(2024)Keyword Raman probe, enzyme activity, activatable, aggregation藤岡礼任Hiroyoshi Fujioka*1・神谷真子Mako Kamiya*2 ラマン顕微法は、励起波長から分子振動の波数分だけずれた波長を有するラマン散乱を観察するため、分子振動を直接検出する顕微法として注目されている。この特徴を活かして生体を無染色で観察するlabel freeイメージングが盛んに行われている1~3)ほか、近年ではラマンスペクトルの幅が蛍光スペクトルの幅よりも50~100倍ほど狭いことを利用して、10種類以上の標的を同時に検出する超多色イメージングも報告されている4~7)。一方で、これまでに開発されてきた高い同時検出数を達成可能なラマンプローブは、常に信号を発するalways-on型のプローブであった。そこで筆者らは、生体内の化学反応を検出可能なactivatableな性質を有したプローブを開発することができれば、ラマンの多重検出能によって多色展開でき、生命現象のより深い理解につながるの 分子振動を検出するラマン顕微法は、蛍光法よりも高い多重検出能を有しているとして、近年、注目を浴びている。筆者らはこれまでに、標的酵素の活性を特異的に検出可能なactivatable型ラマンプローブを開発し、多色化したプローブを用いて生きた細胞で複数の酵素活性を同時検出することに成功してきた。一方で、開発したラマンプローブは細胞内滞留性が低く、酵素反応後に細胞から漏れ出してしまうことで、生体組織ではその酵素活性領域を特異的に検出できないという課題が明らかとなった。そこで、プローブの細胞内滞留性を改善するべく研究を行ったところ、酵素反応後の凝集体形成によって細胞内滞留性が向上する新規activatable型ラマンプローブを開発することに成功した。開発したプローブはショウジョウバエ組織において、標的酵素活性領域を特異的に検出可能であった。Raman imaging, which detects molecular vibration, has attracted significant attention as imaging method with higher multiplexability than fluorescence. We have been working on developing activatable Raman probes which can detect target enzyme activities and succeeded to detect plural enzyme activities in live cells. However, these probes could not detect region with target enzyme activities in tissues because of their poor cellular retention. Therefore, we tried to overcome the problem and developed novel activatable Raman probes with improved cellular retention utilizing aggregate formation. The newly developed probes could detect targeted region specifically in Drosophila tissues.ではないかと考えた。具体的には、標的酵素との反応によってはじめてラマン信号がoffからonに変化するactivatable型ラマンプローブの開発に取り組んだ。実際に開発したプローブは生きた細胞の標的酵素活性を特異的に検出することが可能であり、さらにプローブを多色化することによって4種類の異なる酵素活性をライブセルで同時に検出することに成功した8)。一方で、開発したプローブは細胞内滞留性が乏しく、標的酵素が高発現している細胞とほとんど発現していない細胞が混在する生体組織においては、プローブが標的細胞から漏れ出してしまうことで、その酵素高活性領域を特異的に検出できないという課題が明らかとなってきた。そこで最近、プローブの細胞内滞留性を向上させることで、生体組織においても標的酵素活性領域を特異的に検出可能な新規activatable型ラマンプローブの開発に成功した9)ので、本稿で紹介する。 新規プローブを開発するにあたって、酵素反応後にプ*1 東京工業大学 生命理工学院 助教 Assistant professor, Department of Life Science and Technology, *2 東京工業大学 生命理工学院 教授 Tokyo Institute of TechnologyProfessor, Department of Life Science and Technology, Tokyo Institute of TechnologyBio-imaging with novel activatable Raman probes utilizing aggregate formation凝集体形成能凝集体形成を活用した新規activatable型ラマンプローブによるバイオイメージング

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