MEDCHEMNEWSVol34No1
11/56

7. おわりに11AUTHORの協力で、細胞画像解析結果のAI解析で実際に何ができるかの体験などを実施してきている。本活動では、新たな試みとして参加メンバーがそれぞれの公開可能な技術を持ちより、実際に試してみるというコンソーシアム型の取り組みを行った。今後引き続き、さまざまな医薬品開発過程におけるAIの活用について検討を進める。また、他のsmeWGと連携して次世代抗体、核酸医薬、細胞遺伝子治療などのモダリティへのAIの活用の可能性についても検討を開始する予定である。講演会活動については、他のsmeWGと同様、AI創薬に関する講演会を開催し、演者との意見交換を行った。 日本の創薬力の低下が叫ばれて久しい。40年前には低分子一辺倒だった医薬品の世界も、バイオサイエンスの発展と相まって、抗体医薬、核酸医薬、細胞遺伝子医薬などの多彩なモダリティが活躍する世界に姿を変えた。この間、低分子医薬からバイオ医薬に創薬の軸足を移す“バイオシフト”に乗り遅れた日本は、自国から創出される新薬の減少に悩まされている。 一方でこの20年くらいの間に、新薬を創出する仕組みも変わってきた。特に最近では、欧米で生まれた新薬の多くがベンチャー企業由来であり、これに触発されて日本でも“ベンチャーエコシステム”の必要性が語られベンチャーエコシステム “エコシステム”は本来生態系を意味するが、最近は産業における関係者の連携や、それを支えるインフラを指すビジネス用語として用いられる。ベンチャーエコシステムは、ベンチャーの起業から自立までの好循環をもたらすシステムの形成、それを支える人材・組織、経営資源、ネットワークなどを指す。世界で開発中の医薬品の80%はベンチャー起源であり、その後を製薬企業が引き継ぐ。ベンチャーから製薬企業への流れと、それを支えるエコシステムが世界の創薬を強力に推進する。身近には、ビオンテックとファイザーによるmRNAワクチンの成功例がある。翻って日本では、ベンチャーエコシステムを含む創薬エコシステムは発展途上であり、その充実が喫緊の課題であるとして、国の予算措置(R3、4創薬ベンチャーエコシステム強化事業)も取られている。 参考文献 1) 久保庭均ら, 創薬モダリティ基盤研究会 2021年度smeWG活動報告, バイオサイエンスとインダストリー(B&I), 80, 514‒517 (2022) 2) 森下節夫, Greater Tokyo Biocommunityを始動, B&I., 79, 538‒539 (2021) 3) 和田猛, 「革新的次世代核酸医薬(INGOT)」プロジェクト, B&I., ている。産官学において創薬研究開発に携わる関係者にとって、自前主義からオープンイノベーションへのマインドセットの転換は喫緊の課題になっている。 本研究会は「創薬モダリティに軸足を置いた議論・研究を通じて、日本のバイオエコノミー戦略の推進に資する」ことを目的とするが、そのためにはオープンイノベーションのきっかけをつくる場を提供することも重要な活動であると考えている。本研究会に興味を持たれる方は、ぜひ研究会活動に参加いただければ幸いである。79, 502‒503 (2021)久保庭均(くぼにわ ひとし)1981年 東京工業大学高分子化学専攻修了1981年 中外製薬株式会社入社1993~95年 米国国立衛生研究所客員研究員2007年 製薬技術研究部長2009年 CMC開発部長2011年 製薬企画部長2014年 常務執行役員製薬本部長2018年~現在 JBA運営会議議長/中外製薬顧問久保庭均(バイオインダストリー協会(JBA)創薬モダリティ基盤研究会)Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan用語解説

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る