MEDCHEMNEWSVol34No1
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あおき かずまさ1994年 東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了(薬学博士)同 年 日本学術振興会特別研究員 マサチューセッツ工科大学博士研究員1996年 東京大学薬学部助手1998年 三共株式会社入社低分子創薬研究に従事2019年4月より現職2022~23年度 日本薬学会理事2023年4月より日本薬学会医薬化学部会長MEDCHEM NEWS 34(1)1-1(2024)1年4回2、5、8、11月の1日発行 34巻1号 2024年2月1日発行 Print ISSN: 2432-8618 Online ISSN: 2432-8626学会である「メディシナルケミストリーシンポジウム」、および、産官学の講演者と学生が集い合宿形式で創薬化学について語り合う「創薬懇話会」を基本毎年主催している。また、創薬の最前線やトピックスの特集など、多様な話題や記事を掲載・提供する部会誌「MEDCHEM NEWS」を年4回発行している。 当部会は、産学がそれぞれ主体となり協働する形で2つの「人財育成」事業を推進している。その1つは、大学が企画運営している「創薬人育成事業」。産学の部会員が所属を越えて協力する先進的な企画であり、創薬研究者を目指す大学生・大学院生に対して、企業研究者が全国規模で講義を展開するものである。もう1つは、「創薬ニューフロンティア検討会」。企業中堅研究者と大学からのメンバーが集い、創薬環境の変化に対応すべく当部会にさまざまな企画を提言し実行している。さらに、創薬研究者育成事業の一環として、多くの企業研究者が参画して、高学年の学部生から大学院生向けのパンフレット「創薬化学のすゝめ」を作成し発刊した。 このように産学がバランスよく協働して部会運営に携わるところが医薬化学部会の大きな特徴である。日本発の独創的医薬品の継続的な創出を目指し、創薬研究者の「人財育成」の機会と場を提供する。これこそが当部会の役割であり、その役割を果たすために「しなやかに」変わり続けなくてはならないと考えている。第一三共株式会社 研究開発本部 研究統括部 創薬化学研究所長日本薬学会 医薬化学部会長青木 一真Kazumasa AokiVice President, Medicinal Chemistry Research Laboratories, Daiichi Sankyo Co., Ltd.Division Head, Division of Medicinal Chemistry, The Pharmaceutical Society of Japan 2022年11月に登場した「ChatGPT」が大きな注目を集め、報道でも大きく取り上げられている。このベースとなる技術は「生成AI(人工知能)」と呼ばれ、既存の産業や生活にも大きなインパクトを与えると考えられている。創薬の分野では、データ駆動型創薬が推進され、創薬プロセスにおいて生産性と成功確率の向上に寄与し始めている。 創薬環境の変革のスピードは想像以上に速い。創薬技術が飛躍的に発展し、低分子創薬においては、タンパク質分解誘導薬、RNA標的創薬など、従来の低分子では狙えなかった作用様式によって、創薬モダリティの多様化が急速に進んでいる。 創薬技術の発展に伴い創薬標的は増加し、予防や未病の潮流になればさらに拡大すると予想できる。新しい医薬品の創製のため、モノづくりを担うメディシナルケミストのイノベーションに対する役割は極めて大きい。イノベーションは最先端の科学の深掘りに加えて異分野との境界領域に起こるため、メディシナルケミストはこれまで獲得してきた知識や経験を大切にしつつ、環境変化に応じて柔軟に対応できる「しなやかさ」が求められていると思う。 医薬化学部会は、日本の創薬力をさらに高めていくためにはメディシナルケミストの「人財育成」が重要と捉え、最先端の科学や異分野に関する話題を聴講する機会や、人財交流の場を提供すべく幅広い活動を行っている。具体的には、産官学から参加者が集う創薬化学分野で日本最大のCopyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan公益社団法人 日本薬学会 医薬化学部会NO.1Vol.34 FEBRUARY 2024創薬環境の変化に医薬化学部会が果たす役割

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