2xe+(A) JM642はCUGリピートRNAのヘアピン構造に生じるU-Uミスマッチに結合。水(B)マウスモデルで、ATP2a1 pre-mRNAのスプライシング異常を改善。NNOONOON2 HN− ex22 isoform+ ex22 isoform(B)ONHHNNHH2NP<0.05+20+10+DM1−WT0CUGexp4. 他のRNA標的の事例160(A)図2 JM642によるスプライシング異常の緩和*リン酸との 相互作用など素原子間の静電反発(矢印)を、リン酸等との多点相互作用(図中*)で補完。JM642NHNHCa transport ATPas1(ATP2A1)Exon 21100)%2(Exon 22Exon 23WildDM1JM642(mg/Kg)P<0.013-3.脊髄小脳変性症31型 脊髄小脳変性症31型(SCA31)は、異常伸長したTGGAAリピート配列の挿入を原因とする神経変性遺伝子疾患であり、挿入されたTGGAAリピートの転写により産生するUGGAAリピートがRNA毒性を示すこと引き起すことが、発症機序に重要とされている。計算機シミュレーションと表面プラズモン共鳴法(SPR)による合成分子の結合データを用いた構造活性相関研究から、ジアミノイソキノリン構造をもつCUGリピート選択的結合分子、JM608とその二量体であるJM642を見出した(図2)10)。 大阪大学の中森雅之先生(現、山口大学医学部教授)との共同研究で、DM1マウスモデルを用いて、5日間JM642を腹腔内投与(20mg·kg‒1)し、病原性につながるスプライシング異常の軽減効果を調べた。野生型マウスにおけるAtp2a1遺伝子からは、エクソン22を含むアイソフォーム(+ex22)のみが発現する。一方、DM1マウスモデルでは、+ex22アイソフォームの発現量は、野生型に比べて15.8%であったが、JM642を投与したマウスでは73.6%に大きく回復した。DM1患者由来の筋芽細胞で高頻度に観測されるRNA凝集体形成を調べたところ、JM642を添加した細胞では大きく減少することを確認した。以上の結果は、JM642がCUGリピートに結合し、RNA凝集体生成を阻害した結果、捕捉されていたスプライシング因子が解放される作用機序を強く⽀持している。4-1.マイクロRNAの生合成経路 マイクロRNA(miRNA)は、長さ20数塩基のRNA が報告されている。SCA31の発症機構は、リピートRNAの核内凝集体形成やRNA結合タンパク質の捕捉など、トリヌクレオチドリピート病と共通する部分も多い。研究室保有のリピート結合分子ライブラリーからUGGAAリピートを固定化したセンサーチップを用いたSPR法によりスクリーニングを実施して、UGGAAリピート結合分子としてNCDを見出した(図3)11)。 SCA31への治療効果を検証するために、ショウジョウバエの複眼にUGGAAリピートを発現することで、複眼変性を呈するSCA31ショウジョウバエモデルを用いて、NCDのRNA毒性に対する効果を検証した。NCDをSCA31ショウジョウバエモデルの幼虫に給餌することにより、成虫のショウジョウバエにおける複眼面積の減少や色素の欠落などの複眼変性が、緩和されることを見出した。またUGGAAには結合しないNCD誘導体Quinoline Carbamate Dimer(QCD)を給餌した際には、複眼変性の緩和は見られず、NCDがUGGAAリピートによるRNA毒性を個体レベルで緩和することを実証した。作用機序については今後の研究を待つ必要があるが、NCDがRNA-タンパク質相互作用やRNA凝集体形成を阻害することにより、RNA毒性を緩和していると考えている。
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