206写真1 第38回創薬セミナー 集合写真 「第38回創薬セミナー」が、2023年7月12日(水)~14日(金)の3日間、Royal Hotel 八ヶ岳にて開催された。コロナ禍の影響で、創薬セミナーは、2020年度の開催はなく、第36回(2021年)と第37回(2022年)はオンライン開催であったことから、オンサイト開催は、実に4年ぶりということになる。参加者が一堂に会し、創薬の第一線で活躍される先生方からの貴重なご講演を拝聴するだけでなく、合宿形式で、製薬企業、ベンチャー企業、アカデミアの人たちが、これからの創薬について熱く語らう、創薬セミナーの本来の姿というべき形式での開催は、王子田創薬セミナー委員長をはじめ、運営に携わる創薬セミナー委員会・事務局メンバーも待ち望んだものでもあった。 王子田創薬セミナー委員長から、「第38回創薬セミナーが久しぶりにオンサイト開催として戻って参りました。ここ八ヶ岳の地に集ったこれからの創薬をLeadしていかれる参加者皆様の間での活発な議論や意見交換を期待したい」との旨の開会挨拶より幕を開けた。初日は、3講演が予定されており、最初に、星薬科大学の大竹史明先生から、PROTACによる標的タンパク質分解誘導機構をユビキチン鎖の機能的多様性という観点からの解析結果を中心にご講演いただいた。次に、九州大学の大嶋孝志先生より、安定性・膜透過性に魅力的な特性を有するα-四置換型非天然α-アミノ酸の合成法の開発について、そして、データ駆動型の有機合成プラットフォーム構想についてもご説明いただいた。最後に、SAT研究所の榊敏朗先生より、デジタル技術の高度化により医薬品業界も変革期にいる中で、デジタルヘルス・デジタルセラピューティクスの現状と今後について、わかりやすくご講演いただいた。初日から3講演すべてにおいて、発表終了から質疑の時間終了まで途切れることなく質問の挙手が続くなど、議論も盛り上がりを見せ、その熱は、すぐその後に催された講師の先生を交えてのミキサー・談話会や、2日目以降のすべてのプログラムにも引き継がれていった。 2日目は、まず日本新薬の高垣和史先生より、日本発のアンチセンス核酸医薬品であるビルトラルセン創出における研究段階での成果やご苦労の部分だけでなく、核酸医薬品の開発プロセスでの貴重なご経験もお話しいただいた。次に、モルミルの森英一朗先生から、近年、相分離異常に対する創薬が注目されているが、相分離により分子はさまざまな形態をとるがゆえに、分子の異なる状態を識別しなければならないという難しい課題がある。そこに対して、それを解決しうる新たな技術開発の現状を中心にご発表いただいた。さらに、アクセリードの 福井英夫先生より、医薬品のモダリティが多様化している一方で、ICHガイドライン整備が追い付いていない現状を踏まえ、ニューモダリティ医薬品の非臨床安全性試験ガイダンスを纏めていただき、今後の方向性・注意点等をご説明いただいた。 その後、昼食を挟んで、創薬セミナーならではの企画の一つとなる自由討論会へと移っていった。自由討論会は、同じ創薬に関するあるトピックに興味を有する参加者同士で8~10名程度のグループを作り、自由闊達な意見交換・討論を行うものである。今回はオンサイト開催であるので、相手の表情を見ながら、より自由で伸び伸びした雰囲気で開催できたことは喜ばしい。なお、参加者として、多くの講演者の先生にも入っていただけた。今回の自由討論会のトピックは、「UMNと狙うべき疾患」「リード化合物探索と最適化」「創薬ターゲットとテーマ発掘」「次世代創薬技術」「ニューモダリティ」「AI・インシリコ創薬」「製薬企業におけるキャリアパス」「アカデミア創薬」の8種類であった。その後、アカデミアの方々を中心としたポスターセッションが行われ、企業の研究者などと活発な意見交換が行われた。 2日目の最後は、本セミナーのハイライトである社長講演であった。今回は、モデルナ・ジャパンの鈴木蘭美代表取締役社長に「モデルナにおける、mRNA医薬の開発最前線」というタイトルでご講演いただいた。酵素技術利用によるワクチン 開発のさらなる効率化や、革新的な脂質ナノ粒子を開発してmRNA医薬品の価値をさらに高めていく展望などを、Scienceを重視する企業風土の維持・発展をベースにしながら、優しく丁寧にわかりやすくお話しいただき、多くの参加者の胸へ響くメッセージとなったのではないかと思う。 最終日は、ティムスの蓮見恵司先生より、フィブリン結合の促進により血栓溶解を加速させるSMTPの発見から、第Ⅱ相の臨床試験が行われている今日に至るまでの経緯をご説明いただいた。次に、塩野義製薬の加藤輝久先生より、COVID-19治療薬エンシトレルビル創製の軌跡を、創薬研究開始から13ヵ月で臨床試験入りさせ、その後も開発を加速させて短期間で上記事「第38回創薬セミナー」開催報告
元のページ ../index.html#54