MEDCHEM NEWS Vol.33 No.4
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b)a)とMproの共結晶構造Mpro阻害活性 IC50(μM)0.27±0.110.03±0.022.60±0.500.94±0.210.11±0.050.023±0.0130.007±0.0020.13±0.110.013±0.004not determined>100>100>100>100>100190図4  (a)TKB198(PDB: 8DOY)、(b)TKB245(PDB: 8DOX)図5  TKB198、TKB245と既存の阻害剤との活性比較抗ウイルス活性 EC50(μM)細胞毒性 CC50(μM)compoundTKB198TKB245YH-53/GRL-2420nirmatrelvirensitrelvir fumarateまれている。そこで、nirmatrelvirのP2、P3部位とTKB198のP1’部位を組み合わせて、構造活性相関研究を進めた。その結果、高活性化合物TKB245を創出することに成功した(図3,4)10,11)。4. 化合物の活性評価 各化合物の合成については、原著論文を参考にされたい9~11)。また、化合物の活性評価は、共同研究先である国立国際医療研究センター研究所満屋研究室にて、すべて行っていただいた。SARS-CoV-2(WK-521;従来株)を用いたVeroE6細胞でのRNA-qPCRを使用した抗ウイルス活性評価、WST-8アッセイを使用した細胞毒性評価を行った。代表的な合成化合物のEC50値とCC50値を図5に示した。Nirmatrelvirと比べて、TKB198は強い抗ウイルス活性を有しており、TKB245ははるかに強い活性を有していた。いずれの化合物も顕著な細胞毒性は見られなかった。TKB245はensitrelvirよりも優れた抗ウイルス活性を有していた10)。また、SARS-CoV-2の阻害活性は満屋研究室にて、FRETベースの基質UIVT3を用いた連続的蛍光アッセイおよび免疫染色法によっても確認されている6,10)。これは、通常の標的細胞VeroE6の細胞骨格(アクチン)は網状に赤く染まる一方、SARS-CoV-2感染細胞では細胞骨格が破壊され赤色が消失し、緑色のウイルスタンパク質が出現することで視覚的に評価できる。また、各化合物のMproに対する阻害活性も測定し、そのIC50値を図5に示した。TKB245は強いMpro阻害活性を示した。 TKB245のMproとの共結晶X線構造解析を行ったところ、化合物が想定どおりMproのポケットに収まり、Cys145と共有結合されていること、複数の部位で水素結合をもつことが示唆された。さらに化合物のトリフルオロアセチル部位が疎水性相互作用していることも示唆された(図4b)。5. YH-53/GRL-2420、TKB198、TKB245のP1-P2間のチオアミド化 YH-53/GRL-2420は、血中での安定性に問題があることを前述している。一つの要因として、P1-P2間のアミド結合が分解されやすいことがあげられる7)。そこで、体内でのアミド結合の分解の抑制に伴う、半減期の延長を目的とし、アミド結合の変換を検討した。筆者らは、創薬化学研究の重要なテーマの一つとして、ペプチド結合等価体/ペプチドミメティックの創製研究を30年以上行っている。これについては、誌面の都合上、他誌を参照されたい12)。実際、上述のHIVプロテアーゼ阻害剤TYA5(図2)のP1-P2間のアミド結合を(E)-アルケン型ペプチド結合等価体へ変換した完全非ペプチド阻害剤を創出している8)。したがって、このような変換は筆者らの得意とするところである。今回の研究では具体的に、P1-P2間のアミド結合を中心に、アミド基のミミック(代替品)への変換を行った9~11,13)。その中で、一番効果が高かった(強い生理活性が維持された)もの

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