5.再構成2.膜融合、脱殻1.受容体に吸着(Mpro)4.ウイルス構成物質の生成F3CHNNNHNOHNHOOONONONNNONNNFFFOOSNOONHHNNHNHNHONHOOSO3. 化合物の設計188アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)宿主細胞膜図1 SARS-CoV-2の複製機構図2 筆者らの創製したHIVのプロテアーゼ阻害剤TYA58)とこれまでに見出されたSARS-CoV-2 Mpro阻害剤nirmatrelvir3)、スパイクタンパク質エンベロープタンパク質ヌクレオカプシドタンパク質ウイルスエンベロープウイルスRNAnirmatrelvir(Pfizer)ensitrelvir(Shionogi)6.放出メインプロテアーゼ3.翻訳ポリペプチド鎖TYA5ensitrelvir4)、YH-53/GRL-24206)PhHNOHSMeNHHNClOMeYH-53/GRL-2420これまでに米国食品医薬品局(FDA)等から承認または緊急使用許可を受けたものは、エボラ出血熱の治療薬として開発されていたremdesivirやメルク社がCOVID-19の治療用に開発したmolnupiravirといったRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤、さらにファイザー社と塩野義製薬がそれぞれ開発したnirmatrelvir3)とensitrelvir4)といったMpro阻害剤がある(図2)。もちろん、筆者らが研究をスタートしたときは、remdesivir以外は登場していなかった。同じRNAウイルスに属するHIVを中心に抗ウイルス薬創製を行っていた筆者らは、自身の実績を生かし、COVID-19の治療薬の創製研究に参入したいと考えた。SARS-CoV-2の感染拡大が始まったころ、Mproをターゲットとしたプロテアーゼ阻害剤は、その保存性の高さから大きく注目されていた。SARS-CoVのMpro阻害剤であるが、東京薬科大学の林良雄教授が2013年に報告したYH-53/GRL-2420(図2)5)は、国立国際医療研究センター研究所の満屋裕明所長によって、SARS-CoV-2に対しても強い抗ウイルス作用をもつことが見出された6)。後に林教授らもYH-53のSARS-CoV-2 Mproに対する阻害作用を報告している7)。YH-53/GRL- 2420は、顕著なMpro阻害活性を有するものの、血中半減期が短く、医薬品として問題点もあった。そこで、筆者らは20年前にHIVのプロテアーゼ阻害剤の創製研究を行っていた(図2)8)ことがあり、その経験を生かし、満屋所長らとともに、YH-53/GRL-2420をリード化合物として、種々のSARS-CoV-2変異株に有効なMproを標的としたプロテアーゼ阻害剤の創製研究に着手した。 一般に、Mproが属するシステインプロテアーゼに対する阻害剤の設計では、基質の配列を基にした構造が採用され、酵素の活性中心のシステイン残基のチオール基と共有結合を形成するwarhead構造が導入される。
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