MEDCHEM NEWS Vol.33 No.4
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(A)(B)(C)(A)PROTACによる標的タンパク質分解機構。(B)合成したPROTACのHDAC8分解誘導能評価。(C)従来の阻害薬による触媒機能阻害とPROTACによる多機能阻害。8CADH%α-tubulin 100.00010.0010.01185触媒機能図4  HDAC8 PROTACの合成とその評価 足場機能POIリガンドE3リガンドPolyubiquitinationon lysine residues他のタンパク質従来の酵素阻害薬 触媒機能のみを阻害3a: m-, n = 53b: m-, n = 83c: m-, n = 113d: p-, n = 113a3b3c3dHDAC8 PROTAC 触媒機能と足場機能 両方を阻害0 3 30 3 30 3 30 3 30Proteasomaldegradation(μM)HDAC8100755025concentration of 3c(μM)0.1101001000DC50 = 0.702μM害のみに比べてがん治療においてより有効であることが示唆された(図4C)。5. おわりに 本稿では、HDAC8を標的とし、筆者らが行ってきたクリックケミストリーによるライブラリー構築法を活用した選択的阻害薬の同定からその構造最適化、そして、PROTAC創製への展開までを紹介した。一連の研究により、HDAC8選択的阻害薬とHDAC8 PROTACを見出すとともに、それらを用いてHDAC8の機能を阻害することで抗がん活性を示すことがわかった。特に、HDAC8選択的阻害薬とHDAC8 PROTACの比較から、HDAC8の触媒機能だけでなく、足場機能もともに阻 害することで、より強力な抗がん活性を示すことを見 出した。このように、従来の酵素阻害薬だけでなく、PROTACを利用することで、標的タンパク質の機能解明につながるケースが今後ますます増えてくるであろう。新規モダリティとしてPROTACは注目されているが、効果的なPROTACの創製には、選択性の優れたPOIリガンドの創製が必須であることを忘れてはならない。すなわち、PROTACは得てして従来法と不可分である。したがって、PROTACとともに、低分子創薬の基本である標的タンパク質に対する阻害薬の創製も、今後も追い求めていくべきである。末筆ながら、本稿で紹介した、クリックケミストリーを用いた創薬手法や、PROTAC創製を通して、今後、日本の創薬業界がますます発展していくことを願う。

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