MEDCHEM NEWS Vol.33 No.4
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NHNHNOOOONH3C●ステム -metostat●ステム「-metostat」をもつ医薬品(日本名、開発企業、承認状況) 2001年 東京理科大学博士(薬学)2014年 キシダ化学株式会社入社2017年9月より現職各創薬コンソーシアム設立時より幹事会と協働し、現在それらの運用にも対応180AUTHORCH3CH3参考文献 1) T. Kamiyama, MEDCHEM NEWS, 27, 14‒18 (2017) 2) H. Kano, et al., The 37th Medicinal Chemistry Symposium Abstracts, 152 (2019) 3) H. Iwaoka, MEDCHEM NEWS, 32, 72‒76 (2022)謝辞 本稿執筆のために、J-PUBLICおよびBALUEの幹事会、ならびにキシダ化学 創薬コンソーシアム担当の皆様に多大なご協力を賜りました。厚く御礼申し上げます。定義: histone N-methyltransferase inhibitors(ヒストンメチル基転移酵素阻害薬)薬効分類:抗悪性腫瘍薬1.Tazemetostat(タゼメトスタット、エーザイ/Epizyme、2021年承認)2.Valemetostat(バレメトスタット、第一三共、2022年承認) ヒストンメチル基転移酵素阻害薬を定義するステムとして「-metostat」がある。ヒストンメチル基転移酵素によるヒストンタンパク質のメチル化は、クロマチンのエピジェネティックな翻訳後修飾の一つであり、補酵素であるS-アデノシルメチオニンのメチル基が、ヒストンの特定のリシン残基のアミノ基あるいはアルギニン残基のグアニジノ基に転移する。メチル化修飾によるクロマチン構造の変化により、遺伝子発現が制御(促進あるいは抑制)される。いくつかのがんでヒストンのメチル化状態の異常が報告されており、ステム「-metostat」をもつ医薬品は、ヒストンメチル基転移酵素を阻害するがんの分子標的治療薬として開発されている。 ステム「-metostat」をもつ医薬品として、タゼメトスタットの臭化水素酸塩(タズベリクⓇ)、バレメトスタットのトシル酸塩(エザルミアⓇ)が承認されている。タゼメトスタットは、ヒストンH3の27番目のリシン残基(H3K27)をメチル化するヒストンメチル基転移酵素EZH2を選択的かつ可逆的に阻害することで、細胞周期停止およびアポトーシス誘導を生じさせ、腫瘍増殖抑制作用を示す。再発または難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫に適応される。バレメトスタットは、EZH2に加えて同じくH3K27をメチル化するEZH1も阻害する。EZH1とEZH2はタンパク質複合体を形成しており、両者を同時に阻害することで腫瘍増殖抑制作用を示す。再発または難治性の成人T細胞白血病リンパ腫に適応される。 なお、ステム「-metostat」には、酵素阻害薬を示すステム「-stat」が含まれている。Tazemetostat(タゼメトスタット)宮田 直樹・中川 秀彦(名古屋市立大学)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan五十嵐進(いがらし すすむ)1988年 金沢大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了同 年 アステラス製薬株式会社(旧山之内製薬株式会渡辺俊博(わたなべ としひろ)1988年 京都大学大学院薬学研究科修士課程修了同 年 アステラス製薬株式会社(旧山之内製薬株式会社)入社メディシナルケミストとして創薬研究に従事社)入社2000年 博士(薬学)(京都大学)2011年 同社化学研究所所長2015年 アステラスリサーチテクノロジー株式会社代表取締役社長2019年 キシダ化学株式会社入社2021年9月より現職第34回メディシナルケミストリーシンポジウム実行委員長Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of JapanCH3ステム手帖-22

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