MEDCHEM NEWS Vol.33 No.4
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3. ケミカルバンクから創薬コンソーシアムへ4. J-CLICでの取り組み177研究員による秤量作業は不要図1  ケミカルバンク事業:社外に試薬庫(倉庫)・秤量室をもつイメージ製薬企業の研究員秤量作業およびデータ作成秤量依頼(出庫依頼)& 納入業務キシダ化学2020年4月には国内企業9社が「日本パブリックライブラリコンソーシアム(J-PUBLIC)」を設立した3)。また化合物ライブラリのみならず、オリジナルビルディングブロックの共同利用を目的とした創薬コンソーシアムBALUE(Building block Assembly and mutuaL UsE consortium)も2017年に活動を開始した。 本稿では、キシダ化学の創薬⽀援事業の歩みとともに、上記創薬コンソーシアムにおけるキシダ化学の取り組みを紹介する。 キシダ化学は「すべてはお客様の研究開発のために」をスローガンとして、1996年に試薬調達と統一容器への小分け・出荷業務を合わせた「ケミカルバンク」というサービスを開始した(図1)。本サービスは、顧客所有の化合物を適正な温湿度で管理された倉庫、冷蔵庫あるいは冷凍庫で保管し、顧客からのメールあるいはシステムを介して秤量依頼を入手し、顧客指定の容器に秤量して送付するものである。顧客の立場としては、社外に試薬庫と秤量室を所有しているようなイメージであり、顧客の秤量、試薬管理にかかる時間を大幅に削減するこ とが可能となる。また、預かっている化合物の法規制チェックおよび棚卸もキシダ化学が行うことから、法令違反を犯すようなリスク、あるいは化合物を紛失するようなリスクを大幅に軽減できる。さらに、一つの試薬を共同利用することから、過剰な試薬購入ならびに廃棄物の削減にもつながっている。 1996年以降、10年間は関西の三田事業所のみで本サービスを提供していたが、関東でも同様なサービスを展開することを目的とし、茨城県のつくば事業所にて、2006年からケミカルバンクを開始した。その後、2010年よりキシダ化学オリジナルビルディングブロック(K-BB)、2013年よりキシダ化学オリジナルバーチャルライブラリ(K-Library)の販売を開始し、製薬企業の創薬研究と連携したビジネスをさらに拡大した。このようにケミカルバンクからスタートしたキシダ化学の創薬⽀援事業が徐々に認知されるようになり、創薬コンソーシアムに参入することにつながった。2021年から2023年にかけ、それぞれの創薬コンソーシアム事業は拡大期に入っている(図2)。 J-CLICは、2015年から2019年の5年間で10数万種類の化合物ライブラリの溶液を共同購入したコンソーシアムであり、15社以上が参画したことで1社単独で購入する場合と比較して、そのコストを1/10以下に圧縮することができた。キシダ化学は、化合物調達窓口、溶液化およびプレート化を行い、参加各社に納入することを担当した(図3)。これだけの製薬企業が集まって共同購入することは当時としては画期的であり、日本の創薬研究の活性化ならびに国際競争力強化に貢献できるということで、高いモチベーションを感じながら着手したが、納品形態バリエーションが多岐にわたるということで、当初予想したよりも多大な手作業が発生した。すなわち、参加各社により、容器、シールの種類、ブランク、ラベル貼付の位置あるいは購入化合物数等が異なり、自動化が困難で、それぞれ詳らかに対応すると納期の大幅な遅延が発生する恐れがあった。そのなかで、参加各社

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