〔SUMMARY〕2. 日本における製薬企業のオープンイノベー1.はじめに176MEDCHEM NEWS 33(4)176-180(2023)Keyword open innovation, drug discovery consortium, chemical bank, J-PUBLIC, BALUE五十嵐進Susumu Igarashi*1・渡辺俊博Toshihiro Watanabe*2 ひと昔前の医薬品研究開発は、基礎研究から医薬品開発までを自社で行う、いわゆる自前主義が通例であったが、グローバル化による競争構造の大きな変化により、新薬に対する要求レベルが格段に高まり、以前のような自社だけで製品化まで行うやり方は、すでに限界に達している。すなわち、競争に勝つために求められるスピードに追い付き、新たな市場を創出するためには、自前のネットワークの外にある技術、知識、および人材を活用せざるを得ない状況となっていることから、すでに欧米のメガファーマでは研究初期段階から外部ネットワークを活用する、いわゆるオープンイノベーションが主流となっている。 オープンイノベーションとは、技術を求める組織と、技術をもつ組織が出会い、新しい価値を創造するための手段であり、それは、いわば参加者同士がお互いWin-Winの関係になることを目指すものである。 2010年代から日本の製薬企業はオープンイノベーションの進展を認識し、化合物ライブラリの共同購入、共同構築あるいはビルディンクブロック(BB)の共同利用を目的とした創薬コンソーシアムが設立された。キシダ化学株式会社の創薬⽀援事業は、「すべてはお客様の研究開発のために」をスローガンとしてケミカルバンク事業からスタートし、これまでに複数の創薬コンソーシアム活動に参画している。本稿では、それら創薬コンソーシアムの特徴ならびにキシダ化学の取り組みについて紹介する。Japanese pharmaceutical companies have recognized the advancement of open innovation in the 2010s, several drug discovery consortiums for joint purchasing of chemical libraries, joint constructing of them, or joint use of building blocks were established. Drug discovery support in KISHIDA CHEMICAL CO. LTD. (KISHIDA) started a chemical bank business as a slogan of “Everything for your research and development” and has participated in several drug discovery consortiums. In this essay, we overview characteristic of the consortiums and introduce KISHIDA’s activities for them. 国内主要製薬企業の研究開発についても、日本経済全体の成長や産業競争力の強化といった視点を踏まえれば、もはや各企業が個別に対応するだけでは不十分であり、協調領域を明確化することで企業間の協調を一層強化し、国内製薬企業の強みをさらに発揮できる環境をつくることが必須となっている。しかし、発表前のプロダクトに関する機密保持や、グループ会社での仕事の受発注が一般的とされている日本企業では、オープンイノベーションを介した成功例が少ない。 創薬ビジネス環境がますます厳しくなるなか、2010年代からようやく国内製薬企業間でもオープンイノベーションを許容する雰囲気が形成され、これまでに多くの創薬コンソーシアムが立ち上げられた。その代表例として日本製薬工業協会主導により立ち上げられた化合物ライブラリコンソーシアム、J-CLIC(Japan Compound Library Consortium)があげられる1,2)。15社を超える参加法人が、協働でユニークかつ高品質な化合物ライブラリを共同購入し、参加法人各々の創薬研究を促進させることを目的として設立された。その後、All Japanとしての化合物ライブラリ構築を進める動きが高まり、*1 キシダ化学株式会社 創薬推進部 部長 兼 つくば事業所 所長 General Manager of Drug Discovery & Alliance Department, Head of Tsukuba Works *2 キシダ化学株式会社 創薬・ライフサイエンス事業部 事業部長/執行役員 Officer, Drug Discovery and Life Sciences Division, KISHIDA CHEMICAL CO., LTD.& Office, KISHIDA CHEMICAL CO., LTD.ションすべてはお客様の研究開発のために─創薬コンソーシアムにおけるキシダ化学の取り組み─Everything for your research and development ─KISHIDA’s activities for drug discovery consortiums
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