4. マイクロバイオーム創薬開発の現状172写真2 Vedanta Biosciens社在職中の集合写真(2015年当時)左端が筆者。左から5番目がCEOのBernat Olle博士。あり病原細菌定着阻止図1 Clostridium cluster IV & XIVaが腸管病原細菌の定着・増殖を阻害するなし定着Clostridium cluster IV & XIVaSeventure Partners、Pfizer社などの新規投資家から総額$106.5億の⽀援を受けている。4-1.FMT 2015年に、rCDIに対してFMTが著効することが報告されてから7年ほどで、ドナー由来の糞便サンプルが医薬品としてオーストラリアとアメリカで承認された。この驚くべきスピードでヒトの便が医薬品化された背景には、いくつかの好運があったと考えられる。1つ目は、rCDIに対してFMTが既存薬剤(抗菌剤)よりも優れた効果を発揮したことである。FMTが、標準治療であるバンコマイシンよりも有意に有効であるという臨床試験の結果が発表され、マイクロバイオーム戦略に基づく医薬品開発への関心が飛躍的に高まった。実際にFMTは、抗菌剤投与と比べて再発例を減少させ、また、耐性菌を出現させることもない。2つ目は、CDIに対するFMTの有効性について、その作用機序が比較的単純であることである。CDIは、抗菌剤投与などによる腸内細菌叢 のコロナイゼーション・レジスタンス(Colonization Resistance:CR、病原細菌などの侵入・定着阻害作用)の低下を契機として、C. difficileが腸内で増殖することで引き起こされる。FMTは腸内細菌叢のCRを回復させることにより、C. difficileの腸内での増殖を抑える。CDIのように、FMTの治療効果と作用メカニズムが明
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