3. 筆者とマイクロバイオーム創薬171表1 再発性C. difficile感染症に有効なLBPsの開発企業と開発段階企業FMT用サンプル BiomeBank Ferring Pharmaceutical Seres TherapeuticsLBPs Vedanta Biosciencesフェーズ承認Biomictra:再発性C. difficile感染症治療のためのFMT用ヒト便サンプル(腹腔内視鏡下・経腸)承認Rebyota(RBX2660):ヒト便微生物の経腸製剤承認Vowst(SER-109):エタノール処理ヒト便由来芽胞菌の経口カプセル製剤(芽胞菌)ⅡVE303:再発性C. difficile感染症治療のための糞便由来の8種類の腸内細菌カクテル製剤パイプラインの特徴写真1 Metagen Therapeutics社のメンバーと写真筆者(右から2番目)、Metagen Therapeutics社の中原拓博士(左端)、寺内淳博士(右端)、Biomebank社元CEOのThomas Mitchel博士(左から2番目)。Rebyotaは、直腸投与用の1回分150mLの包装済み便微生物叢懸濁液で、適格なドナーから供給されており、ドナー選定に感染性病原体パネル検査が実施されている。さらに、アメリカのSeres Therapeutics社では、rCDIに対するVowst™3)(SER-109)の第Ⅲ相試験が2022年5月に成功を収め、2023年4月にFDAでrCDI治療薬として承認申請された。本剤は、ドナーの糞便をエタノール処理して得られる芽胞形成性腸内細菌コンソーシアムで、含まれる腸内細菌はロット間で異なる。日本においてもMetagen Therpeutics社がFMTを起 点とした独自マイクロバイオーム創薬に取り組んでいる(写真1)。 しかし、FMTのアプローチでは、病原微生物が含まれない適切なドナーからサンプルを供給する必要があり、大規模に治療を行うのが難しい可能性がある。そのため、多くのマイクロバイオーム創薬企業は、大量培養可能な特定の腸内細菌(単菌またはコンソーシアム)のLBPs開発に重点を置いている。 筆者も、2015年に米国のマサチューセッツ州ケンブリッジにあるマイクロバイオーム創薬ベンチャーであるVedanta Biosciences社に入社し(写真2)、LBPsの開発に従事した。当該企業は特定の疾患に有効なLBPsの開発に焦点を当てており、入社後、まずはrCDIに有効なLBPの候補細菌の探索に注力した。入社前に筆者は、Clostridium cluster IV & XIVaに属する菌群が、腸管病原細菌の腸内での増殖・定着を強く阻害することを見出していたため(図1)4)、特にこれらの細菌群に着目し、数種類~数十種類の腸内細菌カクテルを作製し、CDIを誘導したマウスに投与する実験を繰り返し行った。その結果、Clostridium cluster IV & XIVaに属する8種類の腸内細菌コンソーシアム(VE303:Anaerotruncus colihominis、Blautia sp001304935、Clostridium_Q symbiosum、Dorea longicatena、Enterocloster bolteae、Flavonifractor sp000508885、Longicatena innocuum、Sellimonas intestinalisのヒト由来腸内細菌)がCDIマウスの生存率を大きく上昇させること、その実効代謝物の一つが短鎖脂肪酸であることを発見した5)。さらに、筆者自身も発明者として特許を取得した。 そして、2022年には、米国生物医学先端研究開発局(BARDA)とCombating Antibiotic-Resistant Bacteria Biopharmaceutical Accelerator(CARB-X)からの資金提供により、rCDI患者に対する第Ⅱ相試験が進行し、良好な効果を示した(rCDI再発なし:13.8%(control) vs 45.5%(VE303))6)。さらに同社は、2023年にVE303の第Ⅲ相試験を開始するために、2021年7月にシリーズDの資金調達で$6,800万、そして2023年4月には既存投資家に加え、AMR Action Fund、PureTech Health、
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