3. ダンディー大学生命科学部(University of 4. Professor Alessio Ciulli研究室での研究生活166写真1 V&A Dundee(ヴィクトリア&アルバート博物館の分館)写真2 ダンディー大学生命科学部の外観associate)もかなり多く、年齢分布も非常に広いのも日本の大学とは異なる点である。また合成系の話になってしまうが、女性の比率が日本に比べて圧倒的に高い(感覚だが男女比はほぼ半々)のもその特徴である。その一因として、ドラフトなどの安全設備が高い水準で整えられ、研究安全にかかわる規則も非常に厳しいことから、安心して研究を行える環境が整っていることが大きいと思われる。在籍している学生や研究員の出身も非常に多様であり、地元であるスコットランド出身者を探す方が大変なくらいである。このように、国籍や年齢、性別など非常にダイバーシティに富んでいる点が、一流の研究者を世界中から引き付け、生命科学部の研究レベルを一段と高めている一因であろう。 筆者が派遣されていた研究室を主宰するAlessio Ciulli教授は、タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTACs, Proteolysis Targeting Chimeras)研究の第一人者であり、若くしてインパクトの高い論文を多数報告している新進気鋭の研究者である(筆者よりも1歳若いと聞き正直かなり驚いた)。このCiulli教授の研究室とエーザイ株式会社との間で共同研究を計画しているという話があり、PROTACなどの標的タンパク質分解誘導薬に可能性を感じていた筆者は、派遣研究員として立候補し、幸いなことに2019年7月より現地で研究活動を行うこととなった。余談だが、共同研究に係わる契約締結なども筆者が担当することとなり、英文契約書のやり取りやメール、テレカンファレンスでの契約交渉などを大学のDundee, School of Life Sciences) ダンディー大学の設立は1967年と比較的新しいものの、その前身はセントアンドリュー大学のキャンパスの一つであり、その歴史は長い。大学には筆者が滞在していた生命科学部だけでなく、医学部や歯学部、建築学部、経済学部、芸術学部などもあり、多彩な学部を擁する総合大学である。特に芸術学部に在籍する学生や職員が大学の広報活動などにおいて大きな役割を果たしているところは、日本の総合大学ではなかなか見られない光景ではないかと思う。生命科学部(写真2)もユニークで、日本の大学に当てはめると薬学部よりは理学部に近いかと思われるが、研究分野は生命科学に特化している。例えば有機合成分野の研究室では創薬化学が中心であり、天然物の全合成研究や新規反応開発などは創薬化学研究の一環として一部が行われるのみである。また面白い仕組みとして、学部内には各研究室だけでなくプロテオミクス解析やNGS、化合物管理、スクリーニングロボット、プラスミドの設計・調製、ならびにタンパク質発現精製などを行う部門があり、必要に応じて研究サポートを依頼できる体制が構築されており、感覚としては製薬企業の研究所に近い。また実験機器もかなりの部分が共用で揃えられており、予算が潤沢ではない若手PIであっても研究を円滑に進められる環境が整えられている。日本の大学にもこういった環境がもっと取り入れられると良いのではないかと感じた。 生命科学部は基本的に大学院であり大学院生が多く 在籍しているが、ポスドクや研究補助員(Research
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