3. オープンイノベーションの事例技術軸疾患軸抗体技術の進化へ挑戦を続けることに加え、多様なモダリティを駆使して、画期的新薬を生み出すプラットフォームを築くオープンイノベーションアカデミアやスタートアップ等との共同研究活動の継続と、VC/CVCファンド出資を介した情報への早期アクセスを融合し、進化したオープンイノベーション活動により外部イノベーションを取り込む図3 協和キリンの研究開発コンセプトこれまで培った疾患サイエンスを活かしつつ、有効な治療法のない疾患に「Only-one value drug」を提供し続ける圧倒的な競合優位性をもつLife-changingな価値の創出略品と位置づける開発パイプラインのRocatinlimab(KHK4083/AMG451)の初期の抗体を共同研究で見出すなど、当社が誇るユニークな創薬エコシステムの一つと考えている。そして、このようなパイプラインの拡充への貢献はもとより、国内からの研究員派遣を通じたグローバル人材育成にも大きく貢献している。 この体制のもと、疾患軸でのインテリジェンスや技術軸での研究基盤を強みとして保持しつつ、オープンイノベーションも活用した「Technology-driven創薬」を進展させている。国内外を問わず複数の外部研究機関との連携を通じて、新規モダリティ技術の確立と生み出された技術を用いた特色あるパイプラインの構築に取り組んでいる。 この基本となる研究開発コンセプトは「圧倒的な競合優位性をもつLife-changingな価値の創出」を目指し活動する我々の基本的な方向性として整理され、研究開発に携わる当社グループ社員全体の共通理解の醸成につながっている(図3)。 次項では、Life-changingな価値を有するパイプラインの創出に向けた活動のうち、当社にとって重要な位置づけを占めているオープンイノベーションの事例について述べる。 当社は、早期からオープンイノベーションを重要な戦略と位置づけ、社外に存在する強みを自社の強みと合わせながら、Life-changingな価値の継続的な創出を達成してきた。当社のグローバル・スペシャリティファーマへの成長を支えている前述のグローバル戦略品もオープンイノベーション活動が結実した成果である。ここでは、今後の新たな価値を生み出す源となり得る直近の取り組みからいくつか事例を紹介したい。 まず、当社が強みとして有する抗体医薬品に関し、これまでの研究知見を活かした次世代抗体医薬品に関する技術開発と、それらの技術を搭載したパイプラインの創出を進めている。外部との協業を進めている事例として、2021年8月にSynaffixB.V.(本社:オランダアムステルダム)と締結した抗体薬物複合体(AntibodyDrugConjugate:ADC)創製技術に関するライセンス契約があげられる。この取り組みでは、同社がもつ最先端のADC創製技術を活用し、標的、疾患に最適なADCパイプラインの拡充を加速させており、同社との連携により創製されたパイプラインの一部はすでに前臨床段階に進むなど、後続の探索ステージにあるパイプラインも含め、複数の画期的な医薬品候補の創出につながっている。 低分子医薬品の領域では、後段でも触れるがAxceleadDrugDiscoveryPartners株式会社(本社:神奈川県藤沢市、以下、AxceleadDDP)や株式会社イクスフォレストセラピューティクス(本社:京都府京都市、以下、xFOREST社)と革新的な低分子創薬研究を推進している。 また、近年の発展が目覚ましいAI(ArtificialIntelligence)創薬の領域では、InveniAILLC(本社:米国コネチカット州ギルフォード)との協業があげられる。同社との協業は2018年に開始し、同社のAI領域での強みと当社がもつバイオテクノロジーの強みをかけ合わせることで、既存パイプラインの新規適応疾患の探索に取り組んでいる。さらに、2020年には当社独自の抗体技術に適用する新規標的の探索へも協業の範囲を拡大108
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