SOSONNNSN1NNNN2NNNNN代謝安定性改善最適化代謝物問題の回避最適化BI 1015550PDE4B IC50 : 10nMratio IC50 PDE4D/B : 9ex vivo ED50 : 0.04mg/kgHNPDE4B IC50 : 6nMratio IC50 PDE4D/B : 7ex vivo ED50 : 0.1mg/kgClHNOHHNClOH症作用および抗線維化作用に重要な役割を担う一方、PDE4D阻害の嘔吐への関与が示唆されている。しかしながら、PDE4Bと4Dの活性サイトの相同性は高く、合理的に選択性を向上させることは難しい。すでに上市されているpanPDE4阻害薬であるロフルミラストやアプレミラストは、嘔吐等の消化器に対する副作用により用量に制限があるため、未だPDE4阻害による抗炎症作用および抗線維化作用を示すコンセプトは臨床的に確認されていない。 このような背景の下、演者らは戦略として、①PDE4Bを優先的に阻害する化合物の探索、②リポポリサッカライド(LPS)刺激によるTumorNecrosisFactor-α(TNF-α)産生阻害での抗炎症効果の確認(マウスexvivo試験;ED50)、③②の10倍の投与量にてスンクスを用いた嘔吐試験による副作用の確認、④ラット肺炎症モデルでの効果確認、といったスクリーニングフローを構築して研究を開始した。特に嘔吐試験については、齧歯類では嘔吐が確認できないため、消化管構造がヒトに近く、実験モデルに適しているスンクスを用いて綿密な試験設計を行い、クライテリアを設定していた。 まずはじめに活性のスクリーニングクライテリア(PDE4BIC50<100nM、PDE4D/B比>10倍)を満たすヒットとして提示されたのは、化合物1を代表とするジヒドロチエノピリミジン骨格を有する化合物であった(図1)。化合物1は、マウスexvivo試験において強い効果を示しており、スンクス嘔吐試験もクリアした。しかしながら、構造からも容易に推測されるように代謝安定性が低かったため、その改善を志向した合成展開を進めた。その結果、硫黄原子を酸化したスルホキシドに変換することで、活性を減弱させることなく代謝安定性が向上することを見出した。スルホキシドはキラリティーを有するため、各光学活性体の活性・選択性を評価することで望ましいキラリティーを確認した。その後、ピリミジン上の各置換基の最適化を行うことで、exvivo試験で強力な活性を示す化合物2を見出した。本化合物は、invitroでの選択性はやや低下したものの、嘔吐試験では問題が認められなかった。ここで、スルホキシドのラセミ化リスクおよび芳香族アミン等の変異原性代謝物の生成リスクについて確認したところ、前者は問題なかったが、後者において代謝により変異原性物質であるパラクロロアニリンが生じることが明らかとなった。筆者もこれまでの創薬活動において思いもよらぬ変異原性代謝物に苦しめられた経験があり、このときに演者らが受けたであろうショックは想像に難くない。しかしながら、そのような困難にも挫けることなく、課題を解決すべくピペラジンユニットをピペリジンに変換し、さらなる最適化を遂行することでBI1015550の創製に成功した。また、経口薬を目指すにあたり問題のない薬物動態も示しており、ロフルミラストとの薬効および嘔吐に関する各種invivo比較試験においてBI1015550は優位性を示し、ブレオマイシン抗炎症モデル等においても優れた抗線維化作用を発揮した1)。 臨床試験における嘔吐関連の副作用については、PhaseⅠ、PhaseⅡ共にほぼ認められなかった2,3)。有効性についてもIPF患者を対象としたPhaseⅡにおいて、BI1015550は単独もしくは抗線維化薬との併用で、IPF患者の肺機能低下抑制が確認された。これらの結果より、米国食品医薬品局(FDA)からIPFを対象とする新規治療薬候補としてブレークスルーセラピーに指定されており、現在、PhaseⅢが進行中である。 生成モデルを利用したLigand-BasedDrugDesign3-2. COMP:Equivariant shape-conditioned generation of 3D molecules for ligand-based drug design145PDE4B IC50 : 54nMratio IC50 PDE4D/B : 42ex vivo ED50 : 0.5mg/kg 図1 BI 1015550の創製
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