3. トピックス2. インディアナポリスションでは軽食とお酒が提供されており、それらを嗜みつつ寛いだ中で参加者は情報交換を行うことができた(写真2)。筆者も缶ビールを片手に参加し、興味あるポスターの前で演者とのディスカッションに花を咲かせた。一点残念だったことは、ハイブリッドのライブ講演後、録画ファイルがオンデマンドとしてサイトに掲載されるはずが、その掲載判断が各講演者に委ねられていたこともあり、実際に掲載されたファイル数が少なかったことである。聞きたい講演が重複することは多々あるので、事前にどの演題を聴講するか吟味が必要である。 インディアナポリスは、五大湖の一つミシガン湖の南に位置するインディアナ州の州都である。この都市には、有名なグローバル製薬企業であるイーライリリー・アンド・カンパニーが本社を構えている。都市名を耳にして真っ先に思い浮かぶのは、おそらく世界三大レースの一つである“インディ500”ではないかと思う。毎年5月開催のため、その迫力に直接触れることは叶わなかったが、空港やホテル等、至る所にレーシングカーが展示されており、その雰囲気を味わうことができた。米国で最も多くの州間高速道路が集結しているこの都市は、“CrossroadsofAmerica”とも呼ばれており、今回の学会テーマにも“CrossroadsofChemistry”としてなぞらえられていた。各州から車で訪れるには便利なようではあるが、日本からはインディアナポリス国際空港への直行便がなく経由便となるため、長めの旅路を楽しむこととなった。空港からの移動については、米国ではタクシー配車アプリである「Uber」や「Lyft」が浸透3-1. MEDI:Discovery and first-time disclosure of BI1015550:APDE4inhibitorclinicalcandidate for the treatment of idiopathic pulmonary fibrosis 希少疾患である特発性肺線維症(IPF)の抗線維化治療薬として、ピルフェニドンとニンテダニブがすでに承認されているが、それらの効果は線維化の進行の遅延にとどまり、阻止・治癒までには至らないため、さらなる治療薬の開発が求められていた。一方、これまでの研究において、PDE4の阻害により抗炎症作用だけでなく抗線維化作用も認められることが報告されており、そのIPF治療への適用が期待されている。PDE4にはA、B、C、Dと4つのサブタイプがあり、PDE4B阻害が抗炎しているため、空港にも専用待機所が設置されており、筆者も日本で利用していた「Uber」アプリにてタクシーを呼んで速やかに移動することができた。帰国時にホテルから空港に行く際も、早朝ではあったが容易に手配できて便利であった。気候については、内陸部にあることもあり、3月末とはいえ外を歩くにはダウンジャケットを羽織るくらいの肌寒さであった。 本学会では数多くの部会に分かれて膨大な数の講演が行われる。創薬関連のさまざまな情報に触れることができる部会として、MedicinalChemistry(MEDI)、OrganicChemistry(ORGN)、ComputerChemistry(COMP)、ChemicalInformation(CINF)等があり、筆者は主にMEDIのセッションに参加した。その中でも花形であるFirstTimeDisclosuresのセッションは、今回、クラシカルな低分子だけでなく、タンパク質分解誘導薬(Proteindegrader)、抗体薬物複合体(ADC)、大環状ペプチドと、多岐にわたるモダリティからの演題で構成されており、ニューモダリティの広がり・進化を強く実感したセッションであった。とはいえ、少なからず低分子にこだわりがある筆者としては、その分子構造が初公開となったホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬であるBI1015550の講演について紹介したい。また、最近は創薬プロセスにおけるDX推進やAI活用の動きが非常に活発になっていることもあり、COMPセッションにおいても創薬関連の講演が数多くあった。MEDIの合間を縫って興味のある講演を聴講したが、その中でも特に印象に残ったトピックについて紹介する。144写真2 ポスター会場の様子
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