MEDCHEM NEWS Vol.33 No.3
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AUTHOR現在に至る現在に至る現在に至るロキサム酸やベンズアミドに代わる新規なZincBinderを獲得するという非常に難易度の高い目標に対して、Astex社との協業を活かしFBDDを適用させて取り組んだ。多数のタンパク質-リガンドX線共結晶構造の情報を活用し、フラグメントヒットの活性を向上させ、中枢移行性、経口活性のあるHDAC2阻害剤へと導き、invitroおよびinvivoでヒストンのアセチル化レベルを効率的に上昇させることが確認できた。今回のようにFBDDを起点とすることで、中枢移行性を有する新規HDAC2阻害剤として有望な化合物12を見出せたという結果は、FBDDが中枢薬を志向した医薬品開発においても有用な技術であるということを示している。玉井太一(たまい たいち)2016年大阪府立大学大学院工学研究科博士課程修了同 年大塚製薬株式会社入社石川俊平(いしかわ しゅんぺい)2004年東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了2005年理化学研究所入所2008年薬学博士(東京大学)2010年大塚製薬株式会社入社宮村伸(みやむら しん)1997年大阪大学大学院理学研究科修士課程修了同 年大塚製薬株式会社入社2020年理学博士(名古屋大学)参考文献1)Hassig,C.A.,et al.,Curr. Opin. Chem. Biol.,1,300‒308(1997)2)Gräff,J.,et al.,Nature,483,222‒226(2012)3)Gryder,B.E.,et al.,Future Med. Chem.,4,505‒524(2012)4)Hopkins,A.L.,et al.,Drug Discov.Today,9,430‒431(2004)5)Whitehead,L.,et al.,Bioorg. Med. Chem.,19,4626‒4634(2011)6)EmilianoT.,et al.,ACS Med. Chem. Lett.,13,1591‒1597(2022) 最後に、本研究は大塚製薬株式会社およびAstex社の数多くの研究員の貢献によって進められたものであり、この場を借りて、本研究に携わったすべての方々に厚く御礼申し上げます。Emiliano Tamanini2005年Ph.D.DepartmentofChemistry“G.Ciamician”,Dominic Tisi1995年Ph.D.DepartmentofCrystallography,BirkbeckUniversityofBologna,Italy2008年PostdoctoralResearchScientist,DepartmentofChemistry,QueenMaryUniversityofLondon2009年PostdoctoralResearchScientist,DepartmentofChemistry,UniversityofCambridge2010年ResearchAssociate,DepartmentofMedicinalChemistry,AstexPharmaceuticals,UK2023年Director,DepartmentofMedicinalChemistry,AstexPharmaceuticals,UKCollege,UniversityofLondon1998年PostdoctoralResearchScientist,DepartmentofBiophysics,ImperialCollege,UniversityofLondon2000年ResearchScientist,DepartmentofMolecularScience,AstexPharmaceuticals,UK2017年Director,DepartmentofMolecularScience,AstexPharmaceuticals,UKZr/Niケトンカップリング反応 チオエステルとアルキルハライドを、Ni触媒とZn、Zr錯体存在下カップリングさせる炭素-炭素結合形成反応である。類似の先行研究に対し、ハリコンドリン類のような複雑な基質に適用するために岸らが改良した結果、Zr錯体による反応促進が見出された。反応機構は、①2価NiがZnで還元されて0価Niとなり、チオエステルのC-S結合に酸化的付加、②アルキルハライドがアルキルZrとなりトランスメタル化でNiに付加、③Niが還元的脱離をしてケトンが生成、0価Niが再生する、という触媒サイクルである。アルキルハライドβ位のアルコキシ基なども共存可能で、ZrはNiの酸化的付加も促進していることが提唱されている。本反応は、複雑な天然物の合成や医薬品開発など、高い効率と選択性が求められる場面で重要な役割を果たしている。大橋功(エーザイ株式会社)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan131用語解説

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