MEDCHEM NEWS Vol.33 No.3
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 MT-7117をAy/aマウスに対して0.003、0.03、0.3、3mg/kgの用量にて経口投与し、6日後の体毛の色素沈着を評価したところ、0.3mg/kgから体毛の黒色化が確認できた(図6)。加えて、サルにおいても1mg/kgから皮膚への有意な色素沈着作用が確認され8)、EPPやX連鎖性プロトポルフィリン症(X-linkedProtoporphyria:総じて良好であったことから、本化合物を突破口とすべく活性向上を目指すこととした。 ジフルオロフェニル基をメトキシフェニル基に変換(8)、およびアミド部位のピペリジンをヒドロキシメチルピロリジンに変換することで、強力な活性を有する9を見出した。9は膜透過性が低下したが、プロトンドナーを削減すべく水酸基をメトキシ基でマスクすることで、高活性を維持しながら膜透過性をはじめとする薬物動態や安全性プロファイルを両立したMT-7117の創出に至った。6. MT-7117のin vivo薬効評価XLP)などの光過敏症の治療薬としての可能性を示唆する結果が得られた。 また、C3H/HeNマウスを用いたブレオマイシン(Bleomycin:BLM)誘発強皮症モデルにおいて、MT-7117を0.03、0.3、3mg/kgの用量にて経口投与したところ、0.3mg/kgから有意にコラーゲンの産生を抑制し、全身性強皮症(SystemicSclerosis:SSc)治療薬としての可能性が示された(図7)9)。7. おわりに スクリーニングヒット化合物からの最適化における試行錯誤の中で、3つのブレイクスルー、すなわち「カルボン酸の導入」「フッ素原子の導入」および「3級アミド化合物への変換」により、経口投与可能なMT-7117の創製に成功した。冒頭で述べたように、化合物の最適化はときに矛盾を成立させるプロセスであり、それは「果たして自分の進む先に正解はあるのだろうか」という問い(不安)との闘いでもある。本稿には記載していな125図5 MT-7117(dersimelagon phosphoric acid)の創製図6 Ay/aマウスにおける被毛色素沈着作用

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