MEDCHEM NEWS Vol.33 No.3
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 4のように塩基性を有し、かつその塩基性部位を頂点としてV字の形状をした化合物は、hERGタンパク質と相互作用しやすいことが報告されている7)。そこで母核ピロリジンの塩基性を低減することで、hERG回避を試みた。また、4のもう一つの課題として膜透過性の向上があげられた。本化合物は酸性と塩基性部位を併せもつzwitterion型化合物であることがその原因として考えられるが、塩基性の低減により分子のzwitterionとしての性質を和らげることで、4が有する課題を一挙に克服できるのではないかと予想した。 塩基性低減に向けてさまざまな試行錯誤を行ったが、tBu基にフッ素原子を導入した5に代表されるように、活性自体が大きく低下してしまう結果の連続であった。その中でピロリジン3位にフッ素原子を導入した6において、活性が3倍程度向上することを見出した。これまでの塩基性を低減したすべての化合物とは異なり、6の~MT-7117の創製~◯×◯××低×◯×◯◯4. ピロリジン窒素原子近辺へのフッ素原子の CLintMC1Rアゴニスト活性 a.Percentage of cAMP accumulation at 10μM relative to α-MSH. b.内活性(Intrinsic activity);Percentage of maximum response of α-MSH.hERGCaco2活性が向上したことは大きな驚きであった。この理由は明らかではないが、フッ素原子がMC1Rタンパク質との新たな相互作用を獲得したためと推察している。6のhERG遮断活性および膜透過性については予想どおりに改善傾向ではあったが、経口投与で十分な作用を発揮するには膜透過性や代謝安定性のさらなる向上が必要であった(図4)。5. 3級アミド型化合物への変換   その後、6を起点とした周辺置換基の変換を継続したが、活性とともに膜透過性や代謝安定性の両立を達成できずにいた。最適化に行き詰まりをみせる中で、骨格の大きな変換が必要ではないかとの考えの下、イミダゾールアミドから3級アミドへの置き換えにトライした。その結果、ピペリジンアミド7が中程度ではあるが活性を保持することを見出した(図5)。幸いなことに、7は膜透過性が劇的に向上し、代謝安定性やhERG遮断活性も124図3 各種プロファイルと物理化学的性質の関係図4  イミダゾールアミド化合物の最適化 MC1Rアゴニスト活性hERG(不整脈リスク)Caco2(膜透過性;吸収性)CLint(代謝安定性)hERG(不整脈リスク)物理化学的性質高塩基性脂溶性導入

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