MEDCHEM NEWS Vol.33 No.3
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AUTHOR インダゾール誘導体については3位が置換可能であることを見出し、かさ高いジエチルアミド基を有する10で強いNAMPT活性化作用とsix-wellAmes陰性化の両立が可能となった。興味深いことに、3位のジエチルアミド基存在下では分子右側の芳香環が除去可能であり、1,2-ベンゾイソオキサゾール11がsix-wellAmes陰性なNAMPT活性化剤として獲得された。 上述の遺伝毒性の軽減が確認された化合物について各種評価したところ、11が良好なinvitro活性とADMEプロファイルを示した。そこで11について計5種類の菌株を用いたstandardAmes試験を行ったところ、S9の有無に関わらず全評価濃度において陰性であった。以上のことから、11は良好な化合物プロファイルを有し、なおかつAmes陰性であるNAMPT活性化剤であることが示された。5. おわりに 以上のように、抗肥満薬を指向してNAMPT活性化剤の創薬研究を行い、経口NAMPT活性化剤DS68702229を創製した。本化合物は組織中NAD+量を増加させ、それにより代謝亢進が引き起こされた結果、抗肥満作用につながるという、従来の抗肥満薬とは異なる新規メカニズムにより抗肥満作用を示したと考えられる。本研究が世界中で増加している肥満症の治療に将来的に貢献できれば幸いである。 また創薬研究においてAmes試験で陽性判定となった場合に、その化合物を臨床開発に進めるのは通常困難を要することが多い。本研究によって見出されたAmes陰性化の知見は、他の創薬研究にも応用可能であると考えられるため、本知見が広く創薬に役立てば幸いである。参考文献1)RajmanL.,et al.,Cell Metab.,27,529‒547(2018)2)OkabeK.,et al.,J. Biomed. Sci.,26,34(2019)3)AkiuM.,et al.,Bioorg. Med. Chem. Lett.,43,128048(2021)4)PinkertonA.B.,et al.,Bioorg. Med. Chem. Lett.,41,128007(2021)5)AkiuM.,et al.,Chem. Pharm. Bull.,69,1110‒1122(2021)6)AkiuM.,et al.,Heterocycles,104,94‒122(2022) 最後に、本研究は第一三共株式会社、第一三共RDノバーレ株式会社、SanfordBurnhamPrebys社の多くの研究者の協力により得られた成果である。ここに共同研究者の皆様に心より敬意を表すとともに厚く御礼申し上げる。秋生麻由子(あきう まゆこ)2000年筑波大学大学院環境科学研究科修士課程修了同 年三共株式会社入社2007年第一三共株式会社に転属(統合により)2022年東京理科大学薬学博士取得辻貴司(つじ たかし)2003年京都大学大学院工学研究科修士課程修了同 年三共株式会社入社2007年第一三共株式会社に転属(統合により)2015年東京薬科大学薬学博士取得飯田孝樹(いいだ こうき)2000年北海道大学大学院理学研究科修士課程修了同 年三共株式会社入社2007年第一三共株式会社に転属(統合により)MC1R作動薬 メラノコルチン1受容体(MC1R)は、GPCRのクラスAファミリーに属し、組織分布や機能の異なる5つのMCRの一つである。MC1Rは、メラノサイト、ケラチノサイト、単球、内皮細胞および線維芽細胞等に発現しており、内因性リガンドのα-MSHにより活性化され、細胞内情報伝達物質であるcAMP濃度を増大させる。その結果、メラノサイトではメラニン産生が誘導されることが知られており、実際に臨床においてはペプチド性MC1R作動薬の皮下移植剤がEPP治療薬として使用されている。また、免疫細胞では抗炎症、抗線維化等の作用を発揮し、SSc動物モデルにおいてα-MSHが皮膚の線維化抑制を示すことが報告されている。経口MC1R作動薬は、皮膚関連疾患や自己免疫疾患に対する利便性の高い治療機会を提供するものと期待される。佐藤篤史(田辺三菱製薬株式会社)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan116用語解説

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