AUTHORのご家族に対し、継続的かつスピード感をもって届けていくため、引き続き協和キリンは技術軸、疾患軸での研究開発を追求しながら、オープンイノベーションを活用して積極的な外部の強みを取り込む「Technology-driven創薬」に今後も磨きをかけていく。 本誌の購読者にとり、生体分子の機能解析において分子間相互作用を解析することの重要性は、改めて書くまでもないだろう。分子や構造などのレベルで個々の系をより深く理解することが可能になったように思える現在、複雑な生命現象の理解に取り組もうとすれば、取り扱っている系についての分子間相互作用解析手法を確立・適用することは、日常的な課題になっているに違いない。 本書は定番の日本語総説の「実験医学別冊」である。AlphaFoldなどinsilicoでのアプローチを含めて、分子間相互作用を理解するための解析手法が総合的かつ実例つきでまとめられており、手元に置くのに十分な価値があると思わ羊土社/B5判/368ページ・定価9,900円(税込)(2021年12月刊)れる。 実際、選評者の所属研究室では、植物ホルモンジャスモン酸に関連したケミカルバイオロジー研究が行われており、蛍光異方性、ITC、DSFなど種々の手法を用いた受容体とリガンドの相互作用解析が日常的に行われている。そのようななかで、多岐にわたる分子間相互作用解析の手法や原理についてをまとめている本書は、研究手法の理解を深める上で、大いに助けになると思われる。鳥居義史(とりい よしふみ)1967年生まれ。1994年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。同年キリンビール株式会社(医薬探索研究所)入社。製品戦略、開発等を経て、2013年より協和キリン富士フイルムバイオロジクス株式会社欧州事務所長、2017年同社社長、2020年より現職。TRK type Ⅱ阻害剤 キナーゼのヒンジ部位近傍のactivationloopが開始する位置にDFG(Asp、Phe、Gly)モチーフがキナーゼに共通して存在している。キナーゼ活性を発現する活性型ではDFGモチーフがin(DFG-in)、キナーゼ活性が阻害される不活性型ではout(DFG-out)となる。ATP競合型キナーゼ阻害剤はTypeⅠ、Ⅱ阻害剤の2つに分類される。TypeⅠ阻害剤はDFG-in型キナーゼのATP結合部位に結合しATPと競合する化合物だが、ATP結合部位の近傍にあるアミノ酸は多くのキナーゼで保存されており、キナーゼ選択性を獲得するのは難しいとされている。一方で、TypeⅡ阻害剤はATP結合部位に加えてDFG-out構造に由来する疎水性空間も利用してキナーゼと結合する。この疎水性領域は多様性が高いため、TypeⅡ阻害剤は一般的に高いキナーゼ選択性を示す。実際に、TRKTypeⅡ阻害剤は複数報告されており、そ伊藤俊也(中外製薬株式会社)れらは高いTRK選択性を示している。Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan加治 拓哉(東北大学大学院理学研究科)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan津本浩平、前仲勝実編111低中分子・抗体創薬におけるスクリーニング戦略と実例、in silico解析、一歩進んだ分析技術まで実験医学別冊用語解説紹介創薬研究のための相互作用解析パーフェクト
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