MEDCHEM NEWS Vol.33 No.2
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R4XOOOOOOR4R2R1NR2R1NR3= H- or CH3-R2R1NNR3シリル化剤PGSiBIBS図1 シリルエステル保護基の構造図2 R-Coupling®によるN, C無保護アミノ酸の縮合ISTA-X(X= Cl or Br)OOHSicHBSHNR3OHISTAPGPGOH3-2. 新規シリルエステル型カルボン酸保護基SIPS®の開発56 上記課題を解決すべく、新規シリルエステル型カルボン酸保護基の開発に取り組んだ。シリル系保護基はフッ素イオンによる脱保護が可能とされており、シリルエステル基に嵩高いアルキル鎖を付与することで、立体障 害によるDKP抑制と高疎水性により、有機溶媒への溶解度改善効果を示すと期待した。嵩高いシリル基として、BIBS基(図1)をPG-Phe-OH(PG=Boc、Fmoc、Cbz)のカルボン酸に導入し、各ペプチド合成条件に付した。その結果、BIBS基はFmoc/Boc/Cbz法の脱保護条件、縮合条件に安定であり、フッ化カリウム処理により、他の保護基の脱落と副反応を伴うことなく選択的脱保護が可能であった1)。続いてFmoc-Phe-Phe-OR (R=BIBS or Bzl)をピペリジン処理し、脱Fmocを行った結果、OBzlジペプチドは速やかにDKPに変換されたが、OBIBSジペプチドはまったくDKPを生成しなかった。また、Fmoc-Phe-Phe-OBIBSはFmoc-Phe-Phe-OBzlと比較し、シクロペンチルメチルエーテル、トルエンおよび酢酸エチルに50~100倍程度高い溶解性を示した。当社ではさらに探索を実施し、BIBSエステルと同等の安定性を有し、かつ原料入手性の点から製造に適したcHBS基を開発した。我々はシリル保護基を活用したペプチド合成法をSIPS®(Silyl Peptide Synthesis)と命名した。3-3.新規アミノ酸縮合法R-Coupling®の開発 従来のペプチド合成はC末端からN末端方向への伸長(C to N伸長)により実施し、逆方向への伸長(N to C伸長)は副反応の点から難しいとされていた。特にN-メチルアミノ酸等、反応性が低いアミノ酸を含むペプチドの合成は副反応リスクが高く、低収率であった。しかし、C末端のアミノ酸を活性化し、アミノ酸主鎖のアミノ基とカルボキシ基を保護していないN, C無保護アミノ酸を添加する手法は、伸長ごとの脱保護反応をスキップし、工程数を大幅に削減することが可能な魅力的な方法である。我々はN to C伸長が可能な新規縮合法開発に取り組み、嵩高いISTA-X(X=Cl or Br)を活性化剤とする混合酸無水物法により、嵩高いアミノ酸であるFmoc-Val-OHと求核性の低いH-MePhe-OHの反応においても、良好な光学純度と収率で縮合が進行することを見出した2)。本反応はさまざまな基質において、エピメリ化を抑制しつつ良好な縮合活性を示し、本手法を用いたトリペプチド、テトラペプチドの取得にも成功している。一般的な従来のペプチド合成法とは反対方向、ReverseおよびRetroの意味を込め、本手法をR-Coupling®と命名した(図2)。3-4.SYNCSOL®によるペプチド合成の実例 これまでに紹介したSIPS®とR-Coupling®を用いた液相ペプチド合成技術をSYNCSOL®と命名した。SYNCSOL®を用いた収束型液相ペプチド合成の例として、環状オクタペプチドの製造研究を紹介する(図3)。 はじめに、R-Coupling®を用いて4つのジペプチド(1-4)を短時間、高収率、高純度、カラム精製なしで取得した。次に、ジペプチド(3)をcHBS基により保護後、Cbz基の脱保護においては、DKPの生成を認めずに進行した。続いて、ジペプチド(2)と(1)を順次フラグメント縮合し、得られた(8)のcHBS基をフッ化カ

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