3. 新規液相ペプチド合成技術SYNCSOL®の2. ヘルスケア事業の研究体制55オープンイノベーションの取り組みの他、中分子創薬技術の紹介、社内人材育成制度にも触れながら、当社が提供する創薬研究ソリューションを紹介する。 日本は今、かつてない転換期に直面している。そんな今こそ、当社が未来をつくる主体となり、他に代替の利かない「Must Have」製品・サービスの供給を目指している。そのためには、継続的な研究開発への投資が必要である。今後も当社は競争力の源泉となる研究開発を重視し、売上高研究開発費率を8~9%の水準で維持していく。当社は創薬のアーリーステージにおける研究と開発ステージにおける原薬供給に特化し、製薬企業との共同開発により臨床試験を製薬企業に分担いただくビジネスモデルをとっているため、ヘルスケア領域に分配される研究開発費のほとんどが創薬研究に充当されていることになる。 当社のヘルスケア領域においては、約150名が研究に従事している。また、農業化学品領域における研究員はヘルスケアとは別に約100名が所属している。 創薬研究機能は2022年4月の組織変更に伴い、企画本部に移管されるとともに、創薬と医療材料の研究機能を統合し、ヘルスケア企画部が研究開発をサポートする体制に変更となった。これは、新中期経営計画の実現に向けて、事業領域の選択と集中を加速するための活動の一環である。これにより、ヘルスケア事業においては、当社独自の核酸創薬技術を活用した核酸医薬品の創薬研究を主力領域とし、資源の8割を投入する。一方で低分子創薬においては、計算科学を駆使し迅速に低分子医薬品候補化合物を創出するベンチャー企業のモジュラス株式会社との戦略的提携を締結し、研究開発を並走する他、当社独自のAIを活用した効率的低分子創薬手法を用いて自社創薬を推進していく。また、医療材料領域においては、生体界面制御材料、化粧品材料、新規な培地の開発に注力する。 ヘルスケア事業に従事する研究員が所属する研究所として、千葉県船橋市にある物質科学研究所、材料科学研究所、埼玉県白岡市にある生物科学研究所がある。物質科学研究所と生物科学研究所にはそれぞれ農業化学品研究員も同居しており、一部の創薬研究機能を共有しているとともに、幅広い研究バックグラウンドを有する研究員の交流が各研究所で行われることで、常に異なる着眼3-1.従来型ペプチド合成の課題 ペプチドをいくつかのフラグメントに分割して合成後、各フラグメントを連結し、全長ペプチドを取得する収束的液相ペプチド合成法では、高純度保護ペプチドフラグメントの取得が鍵となる。ペプチド化学合成は液相、固相ともC末端からN末端方向に伸長するルートが一般的であり、伸長後にC末端保護基を選択的除去し、保護ペプチドフラグメントを取得する。C末端保護基として頻用されるメチル、エチルエステルの選択的脱保護は高いエピメリ化リスクを有しており、フラグメント縮合時はC末端をGly、Proとなるように合成ルートを設計するケースが多い。しかし、C末端Proペプチドはジケトピペラジン(DKP)形成によるペプチド鎖の脱落が懸念され、アミノ保護基をFmoc基として伸長する場合には、配列に依存せずにDKP形成が起こる。さらには、長鎖化に従い、保護ペプチドの有機溶媒への溶解性が低下し、中間体精製が困難となるなど、フラグメント縮合部位や利用できる反応に制限があるなかで、最適な合成ルートを設定する必要があることが、ペプチド合成研究者の頭を悩ます元となっている。当社とペプチドリーム株式会社は、これらの諸問題を解決し、効率的ペプチド製造法を新たに確立することを目的とし、共同プロジェクトに取り組んだ。点の吸収が研究員に根付いている。 医薬品研究開発においては、事業性評価の際に製品のCOGS(Cost of goods、製品原価)が大きな課題として直面するケースがある。原薬・製剤・包装にかかるコストの総計がCOGSであるとすると、その最も大きな割合を占める原薬製造工程をいかに安価に抑えるかが重要なポイントとなる。当社の強みの一つに、プロセスケミストリーがある。当社の低分子医薬品原薬のプロセスケミストリーを担う合成研究部は、まさにCOGSの課題解決に直結する研究部隊として何度も窮地を救ってきた。新しいモダリティに挑戦することが求められるこの転換期においても、以下に紹介する新規液相ペプチド合成技術が課題解決の一策となることを期待する。開発
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