ONOOS●ステム -inurad●ステム「-inurad」をもつ医薬品名、開発企業、承認状況1.Dotinurad(ドチヌラド、富士薬品/持田製薬、2020年承認)ClOHCl水島昇著90 分野を問わず研究者にとって、自身の研究成果を世界に向けて発信していくことが“研究者の在り方”と考えている方が多いのではないだろうか。近年、「新版 論文の教室 レポートから卒論まで(NHKブックス)」といった学部生から学べる論文の記載に関する書籍をはじめ、論文の作成に関する書籍やSNSの投稿は増大し、論文執筆の手技を学ぶ機会は増えている。一方で、論文が投稿されてから出版されるまでの過程を知る機会は少ない。本書は出版に至るプロセスの中で体系的に学ぶ機会がなかった「査読」に焦点が当てられている。「我流で査読をしている」という研究者も少なからずいるものと思われるが、本書では査読者が守るべきルールや良質な査読をするコツが解説されている。査読を依頼される研究者はもちろんであるが、加えて、論文を書く側の研究者にとっても「相手を知る」という視点で読むと、自らの論文執筆に大いに参考になる良書と感じた。 本書では第1部として査読のシステムの意義や問題点をはじめ、実際に査読を進めていく中での手順が詳細に記載され定義: urate transporter inhibitors(尿酸トランスポーター阻害薬)薬効分類:高尿酸血症・痛風治療薬 尿酸トランスポーター阻害薬を定義するステムとして「-inurad」がある。尿酸トランスポーターは、腎臓の近位尿細管の腔側膜にある膜タンパク質である。尿細管中の尿酸を血管へ輸送(再吸収)する役割を 担っており、再吸収が増加すると血中の尿酸値が上昇して高尿酸血症に、逆に減少すると低尿酸血症になる。尿酸トランスポーター阻害薬は、尿酸トランスポーターを阻害して、糸球体でろ過された尿酸の尿中排泄を促進し、血中尿酸値を低下させる。 ステム「-inurad」をもつ医薬品として、日本の製薬企業が開発したドチヌラド(ユリスⓇ)が、選択的羊土社/B5判/165ページ・定価4,620円(税込)(2021年6月刊)ている。第2部では国内外の著名な先生方の査読に対する考え方が座談会形式で記載されている。理想の論文評価システムの形、査読者やコメントの透明性といった問題について、各分野のトップランナーの意見が伺える。第3部では査読コメントの例文が記載されている。細胞生物学や生化学といった著者の専門分野の内容が中心ではあるが、本文中にあるとおり「多くの例を見ることで、査読者らしい言い回しや語句の選定などがよりよく理解できる」内容である。また、英語をネイティブとしない我々にとっても助けになるのではないだろうか。 一般にはアカデミアに比べて企業で働く研究者は論文を執筆する機会は多くはないが、企業で創薬を志す私自身にとっても、一研究者として日々の成果を執筆するであろう未来に向けて背中を押される一冊であった。に尿酸の再吸収を阻害する高尿酸血症・痛風治療薬として承認されている。Dotinurad(ドチヌラド)宮田 直樹、中川 秀彦(名古屋市立大学)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan松本 拓(田辺三菱製薬株式会社 創薬本部 神経科学創薬ユニット)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japanステム手帖-20紹介科学を育む 査読の技法+リアルな例文765
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