MEDCHEM NEWS Vol.33 No.2
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AUTHOR74参考文献 1) Li K., et al., Chem. Soc. Rev., 51, 5214‒5236 (2022) 2) Zeng S., et al., Eur. J. Med. Chem., 210, 112981 (2021) 3) Lambert S.A., et al., Cell, 172, 650‒665 (2018) 4) Naganuma M., et al., ACS Med. Chem. Lett., 13, 134‒139 (2022) 5) Schwabe J.W.R., et al., Cell, 75, 567‒578 (1993)ンパク質に対し有用である。 一方で、本研究で見出されたLCL-ER(dec)を含む核酸型PROTACは、オリゴヌクレオチドの化学的安定性の低さ、核酸の不電荷に由来する細胞膜透過性の低さ等、臨床応用に向けてクリアすべき課題は残されているが、これらを克服することで、既存のモダリティでは標的とすることが困難なアンメット・メディカルニーズの高い疾患に対する治療法の開発基盤となることが期待される。 最後に、本研究成果は、国立医薬品食品衛生研究所遺伝子医薬部の井上貴雄先生、有機化学部の辻厳一郎先生、安田女子大学薬学部の松野研司先生、東京大学大学院薬学研究科の内藤幹彦先生をはじめ、多くの方のご協力により得られました。本研究に携わった多くの方々に深く感謝申し上げます。 6) Ghidini A., et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 60, 3163‒3169 (2021) 7) Yokoo H., et al., Chem. Biodivers., 19, e202200828 (2022)永沼美弥子(ながぬま みやこ)2021年 工学院大学工学研究科修士課程修了同 年 横浜市立大学大学院生命医科学研究科博士後期大岡伸通(おおおか のぶみち)2006年 名古屋市立大学大学院薬学研究科博士後期課程 出水庸介(でみず ようすけ)2006年 九州大学大学院薬学府博士後期課程修了同 年 長崎大学大学院長崎大学大学院医歯薬学総合研課程、日本学術振興会特別研究員DC1現在の研究テーマ:オリゴ核酸を用いたタンパク質分解誘導剤PROTACの開発研究修了2009年 国立医薬品食品衛生研究所研究員、タンパク質分解医薬に関する研究を開始2016年 同遺伝子医薬部第三室長現在の研究テーマ:タンパク質分解医薬のレギュラトリーサイエンス研究究科助教2008年 国立医薬品食品衛生研究所有機化学部研究員2011年 主任研究官・室長を経て2017年より部長現在の研究テーマ:有機合成化学を基盤とした低分子・中分子創薬研究およびレギュラトリーサイエンス研究キャップ構造 キャップ構造は、真核生物のmRNAにおいて5′末端に存在する特有の構造である。これは、グアノシンの塩基部7位がメチル化されたN7-メチル化グアノシンがmRNAの5′末端と5′-5′トリリン酸結合を介した結合様式をとる。この構造は、核外輸送の制御やスプライシングの促進として機能する。また、これら機能のほかに、生体内に無数に存在しているmRNA分解酵素である5′→3′エキソヌクレアーゼに対する耐性獲得や、キャップ結合タンパク質であるeIF4Eと結合することによる翻訳の促進、さらに自然免疫受容体であるRIG-ⅠやMDA5による認識回避による免疫応答の抑制として機能している。以上の機能から、mRNAの生体内における安定性や翻訳効率の向上に直接関連しており、mRNA医薬において必要不可欠な構造となっている。 小川和哉(名古屋大学大学院理学研究科)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japanプレシジョンメディシン(precision medicine) プレシジョンメディシン(precision medicine、精密医療)は、現時点では主にがん治療の領域で遺伝子パネル検査 (がんゲノムプロファイリング検査)により、患者個人に最適の治療と最少の副作用を実現することであり、がんゲノム医療として社会実装されつつある。現状では、治療に結びつくのは10~20%とされているが、今後は、全ゲノムシークエンス、トランスオミクスやフェノミクス解析(患者がん移植モデルなど)により、広範な疾患における個別化医療を目指している。 田中利男(三重大学院医学系研究科システムズ薬理学)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan用語解説用語解説

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