LCL-ER(dec)のエストロゲンのシグナル伝達への影響を評価するため、レポータージーンアッセイおよび細胞増殖抑制評価を行った。レポータージーンアッセイでは、内因性のERαリガンドである17β-estradiolの存在下で、評価化合物をトランスフェクションし、24時間培養後、ルシフェラーゼ発光量を定量して評価した。その結果、LCL-ER(dec)は転写阻害活性を有するER73Figure 4 (A)E3リガーゼ依存性評価、(B)結合配列依存性評価、(C)UPS依存性評価明らかとなった(Figure 4B)。このことから、LCL-ER(dec)はERα結合配列特異的に分解誘導していることが示唆された。(C) LCL-ER(dec)がUPSを介してERαを分解しているかを確認するため、UPS経路の阻害剤であるプロテアソーム阻害剤(MG132)、またはE1(ユビキチン活性化酵素)阻害剤(MLN7243)を共添加しウェスタンブロッティングを行った。その結果、両阻害剤共添加時にはERαのタンパク質レベルが減少しなかったことから、LCL-ER(dec)は、期待どおり、UPSを介してERαを分解していることが示唆された(Figure 4C)。5. エストロゲンのシグナル伝達への影響評価(dec)と比較して、ERα依存性の転写活性化を有意に阻害した。また、ERα陽性乳がん細胞株のMCF-7細胞に対し、化合物をトランスフェクションした結果、LCL- ER(dec)によってMCF-7細胞の増殖が顕著に抑制された。LCL-ER(dec)がERαを分解したことでERα量が減少し転写活性化が抑制されたためだと考えられる。6. おわりに 転写因子の分解を誘導する汎用的なPROTACの開発を目指し、標的リガンドにデコイ核酸を用いたPROTAC、LCL-ER(dec)の創製に成功した。本研究成果により、デコイ核酸はPROTACの標的タンパク質のリガンドとして利用可能であり、デコイ核酸型PROTACの転写因子分解誘導剤としての有用性が示唆された。近年、核酸を用いた標的タンパク質分解(Targeted Protein Degradation)戦略が注目されており、デコイ核酸型PROTAC以外にも、Hall, J.らによってRNA結合タンパク質(RBP)を標的としたRNA-PROTACが開発される等6)、いくつかのプラットフォームが報告されている7)。これらの戦略は、リガンド結合ポケットをもたない多くの“undruggable”なタ
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