3. おわりにAUTHOR2-5. 再生医療、遺伝子・細胞治療やデジタル等の最先端技術の活用と人材育成63活用の原則では、「費用対効果評価は医療技術の評価の一部分であり、費用対効果評価の結果のみをもって保険収載の可否や償還価格を判定・評価するものではない」、また「費用及び効果の双方の観点からの評価を行うものであり、費用の観点のみの評価を行うものではない」こと等としており、同制度を保険償還の可否判断には用いないことも確認されているところです。 そもそも、費用対効果評価を含むHTAは、医療技術の使用に関連する医療、社会、経済、および倫理的問題についての情報を体系的、透明、公平、堅固な方法で集約する学際的なプロセスであって、その目的は、患者を重視して優れた価値の実現を求める安全で効果的な医療方針に関する情報を伝えることであることとされています。その一方で、現在実施されている費用対効果分析で評価することが可能な医薬品の価値は限定的であって、その結果のみをもって価格調整が行われていることは適切な手法であるとはいえません。HTA本来の趣旨に鑑みれば、医薬品が患者さんにもたらす利便性等のほか、社会的、倫理的な貢献および中・長期的視点での間接的な経済的効果等を評価に組み込む必要があるものと考えられます。さらに、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による社会経済への甚大な影響を踏まえると、医薬品がもたらす社会的・倫理的な便益を価値評価の対象に含めることの必要性は明確です。 日本において現在実施されている費用対効果分析だけでは評価できない医薬品の価値の評価のためには、医師や患者等が参画するアプレイザルを実施することが必要です。欧州では2002年よりHTAに関する議論がなされてきており、その結果として、長期間にわたり蓄積された知見、経験を有しています。日本に先駆けて直面した課題への解決方法をどのように制度的に反映していくべきか、また多様化する医薬品の評価をどのように考慮していくか、今後とも制度的な検討に積極的に参画し望ましい費用対効果評価の在り方を実現していきます。 限られた医療資源を最も効果的に配分するためには、医療の非効率な部分を見直す必要があり、これにあたりデジタル技術が果たすことができる役割は大きいものがあります。デジタル技術を用いた医療の効率化、医療資源の適正配分および医療アウトカムの向上の実現のため参考文献 1) EFPIA Japanウェブサイト http://efpia.jp/index.html(最終閲覧日:2023年3月31日) 2) 製薬協ウェブサイト https://www.jpma.or.jp/(最終閲覧日:2023年3月31日) 3) PhRMAウェブサイト https://www.phrma-jp.org/(最終閲覧日:2023年3月31日) 4) プレスリリース「一般社団法人 欧州製薬団体連合会を発足」 (http://efpia.jp/link/220209_jpn_press_release_EFPIA_gia_final.pdf)(最終閲覧日:2023年3月31日) 5) プレスリリース「欧州製薬団体連合会(EFPIA)Japan新会長に岩屋孝彦を選出」8)(http://efpia.jp/link/210824_jpn_press-release_EFPIA-chair_final.pdf)(最終閲覧日:2023年3月31日) 6) EFPIA本部ウェブサイト https://www.efpia.eu/(最終閲覧日:2023年3月31日) 7) プレスリリース「欧州製薬団体連合会(EFPIA)Japan新理事長に諸岡健雄を選出」(http://efpia.jp/link/211222_jpn_press_release_director-general_final.pdf)(最終閲覧日:2023年3月31日) 8) IQVIA 2021 “The Global Use of Medicine 2022 Outlook to 2026”には、データ基盤の整備や地域医療への組み込み等を含め、その活用の枠組みの形成を政府が主導していく必要があります。その一方で、日本の医療制度全体を見渡すマクロな観点を持ちつつ、実臨床の場においても患者さんを中心にしたミクロの観点も併せ持ち、かつ世界で加速する新たなテクノロジーシーズの活用を見据えることができる組織内人材の育成に、欧州等での経験を踏まえ積極的に取り組んでいきます。 日本と欧州は、基本的な価値観を共有する良きパートナーとして、今後も相互理解と協力関係を深化させていくべきです。EFPIA Japanは日本の患者さんたちをはじめとする幅広い関係者の方々と、医療と医薬品に関連するさまざまな分野の発展を共に目指し、対話を重ね行動していきたいと考えています。諸岡健雄(もろおか たけお)1994年 京都大学医学部医学科卒業1998年 厚生省(現厚生労働省)2001年 Harvard School of Public Health修士課程修了2010年 コヴィディエンジャパン㈱(現日本メドトロニック㈱)2015年 MSD㈱2021年 起業・独立、EFPIA Japan理事長Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan
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