のむら ひろし1981年3月 東京大学経済学部卒業同 年4月 住友化学工業株式会社(現住友化学株式会社)入社2008年1月 大日本住友製薬株式会社(現住友ファーマ株式会社)同 年6月 執行役員2012年6月 取締役兼執行役員2014年4月 取締役兼常務執行役員2016年4月 取締役兼専務執行役員2017年4月 代表取締役兼専務執行役員2018年4月 代表取締役社長(現任)2021年4月 日本製薬工業協会副会長MEDCHEM NEWS 33(2)49-49(2023)49年4回2、5、8、11月の1日発行 33巻2号 2023年5月1日発行 Print ISSN: 2432-8618 Online ISSN: 2432-8626住友ファーマ株式会社 代表取締役社長野村 博 製薬産業が果たすべき使命とは、少子高齢化による労働人口減少、医療財政のひっ迫等の医薬・医療に関わる社会課題を革新的医薬品創製等のイノベーションにより解決し、経済成長の加速に貢献することである。一方で、製薬業界を取り巻く環境は大変厳しく、研究開発費の高騰、薬価改定、がんや神経変性疾患等に代表されるアンメットメディカルニーズの高い疾患の開発高難度化により、R&D生産性は年々低下している。また、製薬ビジネスは、治療を目的とした医薬品開発から、予防、診断、予後までを含むトータルヘルスケアソリューションに拡大しており、ビッグデータの活用による新たな価値創造の可能性が広がっていることから、他業種の参入も始まり、競争は激化の一途である。 このような激しい環境変化の中、私共の事業内容も合併当初から大きく変わりつつあり、これまでの延長線上にないヘルスケア領域での社会の課題解決に貢献し続けることを目指し、2022年4月より商号を住友ファーマ株式会社に変更し、当社グループのブランドを刷新した。住友グループには「進取敢為」という事業精神があり、自ら進んで物事に取り組み、困難があってもやり遂げる姿勢を表している。当社はこの事業精神を生かし、医療ニーズの高い新薬の研究開発やヘルスケアソリューション開発にチャレンジしている。 さて、製薬会社のイノベーションの源泉は革新的医薬品の研究開発であり、従来型低分子医薬品に加え、抗体、タンパク質、核酸、再生・細胞、遺伝子治療等の新モダリティとその技術開発が要となる。この10~15年、バイオ医薬品の台頭によりメディシナルケミストの将来に疑問を抱かれていたが、抗体修飾、人工核酸等、バイオ医薬品の化学修飾・変換は、有効性、安全性、化学安定性の向上による新たな価値創造に成功しており、再生・細胞、遺伝子治療等への応用も含め、今後もますます発展していくだろう。また、低分子創薬においても、分子メカニズムの解明が進む中で、タンパク質分解誘導薬や核酸標的低分子薬等、従来の低分子では狙えなかった標的や作用様式が増えている。モダリティの多様化が進む中、低分子の占める割合は低下しているものの、売上では引き続き拡大している。AIなどの技術革新をもとに、データ駆動型創薬の推進による生産性向上に取り組みながら、低分子創薬は新たな発展のステージを迎えるであろう。 サイエンスの絶え間のない発展は、疾患/病態の分子メカニズムを解明し、創薬のヒントを与え続ける。医薬品創製には、最先端のサイエンスで病態を正しく理解するバイオロジーと、適切に選択されたモダリティを分子レベルで最適化するケミストリーの両輪が相乗することが必須である。医薬品である以上、モノづくりの中心であるメディシナルケミストのイノベーションに対する役割は極めて大きい。ケミストリーによる価値創造の広がりは今後一層増していく。果敢に挑戦を続けることでイノベーションを生み出し、日本発の革新的医薬品が持続的に創出されるよう、メディシナルケミストの皆様に期待する。Hiroshi NomuraRepresentative Director, President and CEO, Sumitomo Pharma Co., Ltd.Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan公益社団法人 日本薬学会 医薬化学部会NO.2Vol.33 MAY 2023だから、メディシナルケミストのなんとかしたい。果敢な挑戦に期待する
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