4. 自製化(自ら製造して製品化)の取り組み8図3 製品総合力No.1の製品づくり水なしでも服用できるOD錠は、あえて隙間をつくることによって水の浸透を促して速やかな溶出を実現している。しかしながら隙間は“もろさ”と表裏一体であり、錠剤の“割れ”や“欠け”につながるため、製造、運送、持ち運び時の取り扱いに十分な配慮が必要であった。 「薬の服用が容易ではない患者さんや水分摂取を制限されている患者さんにも服用しやすい薬を届けたい」「外出先であっても、必要なときに、すぐに水なしで服用可能な薬を届けたい」「取り扱いやすい薬を届けたい」という想い(製品総合力No.1の製品づくり)から誕生したのが、“Rapid and Comfortable Tablets(RACTAB®)技術”である。“溶けやすさ”vs“硬さ”という相反する物性を両立させた薬剤の創製を目指して、“水なしでも服用可能なOD錠を製造する画期的な技術”として2004年に研究開発に成功した(現 基盤技術本部&製剤技術本部)。 少量の水を加えると錠剤内部に隙間ができ、速やかに水が浸透していく独自開発の“速崩壊性粒子”により、唾液だけで速やかに溶けるOD錠の創製を実現した。苦い薬であっても、その苦味を包みこんだ小さな粒子“機能性粒子”と“速崩壊性粒子”を混合することで、口の中で溶けても苦くないOD錠化を可能にした(図4)。 上述のように、Quality of Lifeの改善を意識した新しい剤形として1990年代に欧米で製品化されたOD錠は、世界的に広く研究され、2008年12月にはアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)が提案したOD錠ガイダンスにおいて、新規製剤として定義づけられ、すでに多くのOD錠が商品化されている。本邦では、2011年第16改正日本薬局方(JP)の製剤通則において、「口腔内で速やかに溶解又は崩壊させて服用できる錠剤」として追加収載された。 本邦における粒子設計技術は、世界的にみてもトップレベルにあり、微粒子の表面や界面の特性を利用したナノ粒子設計や、粒子間相互作用を制御できる加工技術、高機能化を付与することができる医薬品添加剤の開発など、素材の微粒化、複合化やさまざまな粒子に特性を与える“微粒子設計技術”は、製薬、食品、化粧品、ファインケミカルの分野において多くの研究がなされている。弊社では、さらなる機能性を付与させるべく、“粒子設計技術を進化させた新規基盤技術の確立”に加えて、“理想とする製剤化に適した原薬”や“原薬の高含有薬物粒子”の創製に取り組んでいる。 ジェネリック医薬品の開発では、既成の原薬を他社から購入して製剤開発に使用することが一般的である。しかしながら原薬の特性や原薬製造委託先によっては、“自社の基準に適合した高品質な原薬”や“製剤化に適した原薬”の入手、安定的な確保が難しいケースが近年
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