MEDCHEM NEWS Vol.33 No.1
37/48

37AUTHORことで、スルフィルイミンの形成を通じた修飾を行っている(図3)。求核的な修飾反応ではないため、LysやCysとは直交性を示す。また、タンパク質表面の露出度に応じて修飾収率が変化することが報告された。WellsらはChang、Tosteらと共同で、本手法を抗体修飾へと適用した10)。抗体(トラスツズマブ)Fab領域にMet変異(LC.T74M)を導入し、アジド導入型オキサジリジン試薬による修飾を行った後、MMAFを担持させた歪みアルキン(DBCO)を連結させることによってADCを調製した。このADCは、6mg/kgの用量で5週間にわたりマウス投与実験に供され、in vivoでの腫瘍増殖抑制活性を示した。ヒト化IgG抗体表面にはMetがほぼ露出していないことから、薬物結合数(DAR)は1.9程度に制御されてもおり、Met修飾のADC合成における有用性が示された。現在のところMet選択的修飾法の報告11)は限られており、さらなる発展が期待される。5. おわりに 以上のように、レドックス活性を活かしたアミノ酸選択的修飾反応は近年になって発展を遂げており、機能性分子と抗体を連結する手法としての応用が種々示され始めている。先だって発展を遂げてきたLysやCysを標的とする求核的修飾法は、市販ADCの製造にもすでに数多く活用されているが、修飾様式の不均質性に起因する品質管理面での困難も生じている。そのため、表面露出度が比較的小さく、修飾数・修飾位置の制御に利点を有するTyrやTrp、Met、さらにヒスチジン(His)といったアミノ酸残基を標的とするタンパク質修飾法とその抗体への適用は、次の世代の化学修飾抗体の活用を促す基盤技術になると期待される。また、化学修飾抗体の応用はADCに止まらず、Quenchbodyや電子顕微鏡プローブなどの形でその範囲を広げており、今後も興味深い応参考文献 1) Ban, H., et al., Bioconjug. Chem., 24, 520‒532 (2013) 2) Sato, S., et al., Bioconjug. Chem., 31, 1417‒1424 (2020) 3) Sato, S., et al., Chem. Commun., 57, 9760‒9763 (2021) 4) Bruins, J. J., et al., Bioconjug. Chem., 28, 1189‒1193 (2017) 5) Maruyama, K., et al., J. Am. Chem. Soc., 143, 19844‒19855 (2021) 6) Seki, Y., et al., J. Am. Chem. Soc., 138, 10798‒10801 (2016) 7) Tagawa, H., et al., RSC Adv., 10, 16727‒16731 (2020) 8) Malawska, K. J., et al., ChemRxiv., (2022) DOI: 10.26434/chemrxiv-2022-993zl 9) Lin, S., et al., Science, 355, 597‒602 (2017)10) Elledge, S. K., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 117, 5733‒5740 (2020)11) Tayler, M.T., et al., Nature, 562, 563‒567 (2018)用発展を遂げることが期待できる。1997-2010年 東京大学大学院薬学系研究科助教、講師、准教授2010年 現在に至る士(薬学)2008-2010年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校博士研究員2010-2016年 東京大学大学院薬学系研究科助教2016-2022年 東京大学大学院薬学系研究科講師2022年 現在に至る金井求(かない もとむ)1992年 東京大学大学院薬学系研究科博士課程中退1992-1997年 大阪大学産業科学研究所助手1996-1997年 ウイスコンシン大学マディソン校博士研究生長幸之助(おいさき こうのすけ)2008年 東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了、博豊邉萌(とよべ もえ)2022年 北海道大学薬学部卒業同 年 現在に至る員Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan

元のページ  ../index.html#37

このブックを見る