c.─SPOCQ─ Delftらによる報告4)a.─PTAD─ Barbasらによる報告1)d.─イミノキシルラジカル─ 生長と金井らによる報告5)b.─N-メチルルミノール─ 佐藤と中村らによる報告2)(図1b)2)。N-メチルルミノール型試薬が一電子移動機構(SET機構)にて酸化的に活性化されることにより、反応が進行すると考えられている。本修飾法は前述のPTAD法と比較して、修飾体の安定性に優れており、しばしば問題となっていたPTAD分解生成物(イソシアナート)とLys側鎖との交差反応が見られない。そのため、Tyr選択性が向上しており、さらにTyrの表面露出度に応じた位置選択性も発現している。さらに、本反応を用いて抗体修飾を行っている。原理上、抗原認識部位に位置するTyrも修飾されうるが、本修飾法は後述の2つの手法と異なり、Tyrのフェノール骨格が反応後も消失しないため、結合能への影響は比較的少ないと推測されている。実際に、未修飾抗体の抗原結合能(Kd=0.108nM)と比べ、修飾抗体の結合能(Kd=0.732nM)は大きく劣らないことを明らかとした。ADCへの応用も行っている。抗HER2抗体(トラスツズマブ)にS-Sリンカーを介して抗がん物質(メルタンシン、DM1)を連結させた。本ADCをNCI-N87腫瘍移植モデルマウスに対し24時間静脈内注射することで、市販ADCであるカドサイラと同等のin vivo抗がん活性を示すことを明らかとした。さらに、免疫測定素子であるQuenchbodyの合成へも応用している3)。本手法に引き続く歪み駆動34図1 チロシン選択的反応とその修飾抗体の応用例(L:リンカー)DM1:メルタンシン性をもつと考えられている。しかし、抗体表面に露出しているTyrは、抗原認識部位に高頻度に位置しており、修飾により抗原認識能を低下させてしまう懸念を有してもいる。 Barbasらは、4-フェニル-3H-1,2,4-トリアゾリン-3,5(4H)-ジオン(PTAD)を用いたTyr選択的反応を報告し、ADCの合成へと応用した(図1a)1)。本法では、前駆体をブロモヒダントインにより酸化してPTADを要時調製し、Tyrと混合することで、buffer条件下、5分ほどで修飾体が形成される。この手法を用いて、抗HER2抗体(トラスツズマブ)に対して、アジドウラゾールリンカーを介してCCR5阻害剤(アプラビロク)を、抗原認識能を維持したまま、1抗体あたり1分子連結することに成功した。Barbasらはまた、CCR5とHIV1疑似ウイルスを発現させたTMZ-bl細胞を用いてADCとしての有効性を試験した。その結果、アプラビロク単体(IC50=5.6nM)と同程度の活性をADCは示した(IC50=11.3nM)。 佐藤と中村らは、N-メチルルミノール類縁体を反応剤として用い、ヘミン/H2O2または西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)/H2O2条件、または電気化学条件によって促進されるTyr選択的修飾法を報告した
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