橋本宗明著32AUTHOR 3) Kolb, U., et al., Ultramicroscopy, 107, 507‒513 (2007) 4) Gemmi, M., et al., Acta Crystallogr. B Struct. Sci. Cryst. Eng. Mater., 75, 495‒504 (2019) 5) Petříček, V., et al., Z. Kristallogr. Cryst. Mater., 229, 345‒352 (2014) 6) Guzman-Afonso, C., et al., Nat. Commun., 10, 3537 (2019) 7) Hodgkinson, P., Prog. Nucl. Magn. Reson. Spectrosc., 118‒119 10‒53 (2020) 8) Palatinus, L., et al., Science, 355, 166‒169 (2017) 9) Rajput, L., et al., IUCrJ, 4, 466‒475 (2017)10) Giannozzi, P., et al., J. Phys. Condens. Matter., 21, 395502 (2009) 新型コロナウイルス感染症のパンデミックは世界に甚大な影響をもたらした。これに対して、医薬品業界では通常の開発プロセスでは考えられない勢いで新しいワクチン・医薬品開発が進められ、そのうちのいくつかが実際に臨床に投入された。その結果、現時点で新型コロナの脅威は大幅に抑制されたように感じている。これは医薬品開発に携わるすべての人々の勝利といってよいだろう。一方で、日本国内を見てみると、「コロナ敗戦」という言葉が象徴するように大変厳しい状況ではなかろうか。本書はこの「敗戦」における日本の現状と将来への布石を描いた一冊である。 なぜ日本は、ワクチン開発も抗ウイルス薬開発も主導権を取れなかったのか。本書では、ワクチンという医薬品の特殊性、日本人の国民性、行政の方針など、さまざまな観点から日経BP社/単行本/256ページ・定価2,420円(税込)(2022年4月刊)考察されている。これらは過去数十年間における食い違いの積み重ねによるものであり、一朝一夕に解決することはやはり難しいだろう。しかしながら、次のパンデミックはいつか必ず起きる。課題は多いけれども、戦力になる人材や環境を整え、新しい芽を育てていくことは重要であろう。私は、講義等でワクチンの話題に触れる際に「かつて日本はワクチン先進国であった」と紹介することが多い。「かつて」を外すために、いま何ができるだろうか。本書をきっかけとして、新しい挑戦が生まれることを期待したい。西山裕介(にしやま ゆうすけ)2002年 京都大学大学院理学研究科博士(理学)取得2002~2007年 理化学研究所ポスドク2007年 日本電子株式会社入社(現職)2014年 理化学研究所理研-JEOL連携センターユニットリーダー(現職)第一原理計算 経験的パラメーターを使わず、物理原理のみで電子構造を計算する量子力学手法。NMRパラメーター(化学シフト、四極子カップリングなど)は、局所的な電子構造に敏感なので第一原理計算で計算された構造を評価するのに適している。GIPAW(Gauge Including Projector Augmented Waves)法の導入により、原子核まわりの電子を精密に計算できるようになりNMRの計算が大幅に高精度化された。CASTEPやquantum espressoといったソフトウェアパッケージを用いることにより、容易に計算を実行できる。 西山裕介(理化学研究所)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan腰塚 哲朗(岐阜薬科大学感染制御学研究室)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japanなぜ日本の製薬企業は出遅れたのか用語解説紹介コロナと創薬
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