m-ジメチルアミノフェノキシ酢酸構造を有する誘導体6がP4位では最適であることを見出した(図3)6)。5. ダウンサイジングをめざしたジペプチド型4. トリペプチド型SARS-CoV 3CLpro阻害剤24図3 トリペプチド型阻害剤の構造最適化施した。その結果、チアゾールと活性中心のHis41側鎖のイミダゾールNH基が水素結合をしていることが示唆され、阻害活性の向上に寄与していると考えられた。 筆者らは誘導体4をリード化合物として、さらなる3CLpro阻害活性向上をめざして構造活性相関研究を実施した。前述のドッキングスタディにおいて、4のチアゾール構造が存在するS1’位にはさらなる空間があることが示唆されていた。そこで、種々チアゾール誘導体を有する阻害剤を合成して3CLpro阻害活性評価を行ったところ、ベンゾチアゾールを導入したSH-5において阻害活性の劇的な向上が確認できた(図3)6)。同様のドッキングスタディを行ったところ、ベンゾチアゾール構造はS1’位のポケットにきれいにはまり込んでおり、アリールケトン型阻害剤のwarheadとして、ベンゾチアゾール骨格が最適であると結論づけた。SH-5のP4位はアミノ基の保護基として用いられるCbz(ベンジルオキシカルボニル)基であったことから、筆者らはSH-5をリード化合物としてP4位の構造最適化に着手した。P4位の構造活性相関研究の結果、Cbz基のベンゼン環に相当する部位に芳香族官能基が必要であること、同ベンゼン環の置換基は電子供与基が好ましく、導入する位置としてオルト位は相性が悪く、メタ位やパラ位では阻害活性が維持もしくは向上することがわかった。結果的に、3CLpro阻害剤の創製 筆者らはP4位の構造活性相関を実施して、当時では最強クラスの3CLpro阻害剤を見出したが、その過程で分子量が徐々に増加してしまい、リピンスキーの法則から大きく逸脱していることを懸念していた。そこで、分子量のダウンサイジングを目的に阻害剤のscrap and buildを実施し、新たにジペプチド型3CLpro阻害剤の開発研究に着手した。最初に合成したP3位のValを除いた化合物7では、阻害活性が1000倍以上減弱した (図4)。その後、P3位の構造活性相関を実施したところ、誘導体11で一定の阻害活性を見出すことに成功した7)。化合物11はP3位にN-フェニルグリシン構造を有しており、P3位の主鎖アミンに相当するアミノ基は阻害活性に重要であることがわかった(図4)。また、N-フェニルグリシン構造のメトキシ基の導入位置によって阻害活性が大きく変化したことから、これら置換基の位置によって当該アミンの配向性が支配され、阻害活性に影響を与えていると考えた。そこで、よりリジッドな構造への構造変換をめざし、誘導体のN-フェニルグリシン構造をインドール基へ置換したYH-53を合成したところ、トリペプチド型阻害剤に匹敵する阻害活性を示すことを見出した(図4)8)。YH-53と3CLproのドッキングスタ の構造活性相関研究
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