23図2 初期の構造最適化とアリールケトン型阻害剤4の阻害様式カルボニル炭素の電子密度が下がり、酵素活性中心チオールからの求核攻撃が促進されることが知られていた。筆者らは、まず阻害剤1を合成し、共同研究先であるJohns Hopkins大学のErnesto Freire教授に3CLpro阻害活性評価を行っていただいたが、期待に反してその阻害活性は弱かった。1H NMR解析の結果、P1位Glnの側鎖アミドがCF3ケトンのカルボニル基と六員環構造を形成した1’が観測され、阻害活性が減弱していることが判明した(図2)4)。そこで、Gln側鎖アミドをジアルキルアミドに置換した誘導体2や3を合成したところ、阻害活性の向上が確認できた。その後、複数の誘導体を合成して阻害活性試験を行った結果、P1位側鎖にはピロリドン構造が最適であり、P4位のアラニン残基は不要であることがわかった。さらにwarhead部にCF3基の代わりに電子吸引性のチアゾール基を導入した誘導体4では、阻害活性が大幅に向上することが明らかになった(図2)5)。P1’位に相当するチアゾール基は、隣接カルボニル基の分極効果に加えてS1’ポケットへの新たな相互作用を生じていると推察された。そこで、SARS-CoV 3CLproと別グループから報告された阻害剤N3の複合体X線結晶解析の座標データ(PDB ID:1WOF)を利用し、統合計算化学システムMOE(Molecular Operating Environment)を用いて、誘導体4とSARS-CoV 3CLproとのドッキングスタディを実
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