日本核酸化学会監 杉本直己編20AUTHOR10) Covarrubias A.J., et al., Nat. Metab., 2, 1265‒1283 (2020)11) Chini C., et al., Nat. Metab., 2, 1284‒1304 (2020)12) Geerling G., et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 52, 2050‒2064 (2011) 最近、DNAやRNAといった核酸に関連した研究を目にする機会が増えたと感じる方々も多いのではないだろうか。医薬という観点からは、核酸医薬の開発が大きな注目を集めており、国内外でアンチセンスやsiRNA核酸が続々と承認されている。また、COVID-19との闘いにおいては、世界初のmRNAワクチンが重要な役割を果たしたことは周知の事実であろう。一方で、ゲノムを設計・合成・編集するバイオテクノロジーの進展も目覚ましく、医療や品種改良への実装も進んでいる。核酸研究は、もはや生物学のみならず、医薬農工など幅広い分野で重要な研究対象となっている。 このように核酸研究が大きなトレンドとなるなか、核酸科学の基礎から最先端まで、全体像をつかみたい方におすすめしたいのが、本ハンドブックである。本書の特徴は、有機化講談社/A5判/576ページ・定価9,350円(税込)(2020年12月刊)学・物理化学・分析化学・生物学をはじめ、さまざまな分野における核酸研究が簡潔に解説されている点であり、どのような研究背景をもつ方でも入り込みやすいのではないかと思う。内容は2部構成になっており、第Ⅰ部では、核酸科学の基礎的な理論や研究手法がわかりやすく解説されている。第Ⅱ部では、国内の名だたる研究者によって合計44ものトピックスが解説されており、核酸科学の最前線を網羅的に理解できるようになっている。まさに核酸科学のバイブルと呼ぶにふさわしい一冊である。核酸研究に興味のある方にぜひ一読をおすすめしたい。蕭穗文(しゃお すいうぇん)2015年 国立台湾大学(公衆衛生学科)卒業2017年 国立台湾大学大学院環境衛生研究科修士課程修了2022年 台北医学大学大学院薬学研究科博士課程修了 土居雅夫(どい まさお)1998年 東京大学理学部(生物化学科)卒業2003年 東京大学大学院理学系研究科修了理学博士同 年 フランス国立科学センターポスドク2006年 神戸大学大学院医学系研究科助手2007年 京都大学大学院薬学研究科講師、准教授2018年 京都大学大学院薬学研究科教授現在に至る博士(薬学)同 年 京都大学大学院薬学研究科特定研究員現在に至るイントラクライン機構 イントラクライン(intracrine)とは「細胞内分泌」と訳され、エンドクライン(内分泌)やパラクライン(傍分泌)、オートクライン(自己分泌)とは異なるホルモンの作用様式を表す。イントラクラインの場合、ホルモンの合成系と受容体が同一の細胞にある。ホルモンはそれが作用する細胞と同じ細胞内で局所的に合成され、細胞外に放出される前に代謝的に不活性化される。 土居雅夫(京都大学大学院薬学研究科)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan岡村 秀紀(東北大学多元物質科学研究所)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan用語解説紹介核酸科学ハンドブック
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