MEDCHEM NEWS Vol.33 No.1
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NHOFFFFNN●ステム -ralstat(-ラルスタット)[遺伝性血管性浮腫治療薬]●ステム「-ralstat」をもつ医薬品15AUTHOR(2013)HHNNH2CNLerner先生が亡くなられた。本人のバックグラウンドは免疫学であったが、化学の重要性をことのほか理解されていた。現在のスクリプス研究所を創った一番の功労者がLerner先生であることは間違いない。ひとつの時代が終わり、スクリプス研究所の新しい時代が始まっており、さらなる発展を大いに期待している。 これからも多くの若い研究者が、スクリプス研究所に留学されることと思います。その折には、日本スクリプス会にコンタクトしていただき、研究や生活の情報を入手してください。日本スクリプス会が、留学・出張の良きガイドブックになれれば幸いです。最後に、日本スクリプス会の運営には、本稿には書ききれない多くの会員の皆様が関わっており、この場を借りて御礼申し上げる次第です。定義: kallikrein inhibitors(血漿カリクレイン阻害薬)1.Berotralstat(ベロトラルスタット、鳥居薬品/BioCryst、2021年承認) 血漿カリクレイン阻害薬を定義するステムとして「-ralstat」がある。血漿カリクレインは、キニノーゲンを加水分解してブラジキニンを産生するセリンプロテアーゼである。遺伝性血管性浮腫(HAE)は、血漿カリクレイン活性の正常な調節が障害され、血漿カリクレイン活性およびブラジキニン放出が亢進され、ブラジキニンによる血管透過性が亢進して浮腫が生じる遺伝性疾患である。血漿カリクレイン阻害薬は、血漿カリクレイン活性を低下させ、HAE患者における過剰なブラジキニン生成を制御し、血管透過性を抑制する。ステム「-ralstat」をもつ唯一の医薬品として、ベロトラルスタットの塩酸塩(オラデオⓇ)がある。ベロトラルスタットは、遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制を効能・効果として2021年に承認され た。なお、「-ralstat」には、酵素阻害薬を示すステム「-stat」1)が含まれている。1) 「医薬品の名前:ステムを知ればクスリがわかる」、じほう、p.155Berotralstat(ベロトラルスタット)宮田 直樹(名古屋市立大学)Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan北村精也(きたむら せいや)1987年京都生まれ。2016年よりスクリプス研究所K. Barry Sharpless/Dennis Wolan/Ian Wilson研で博士研究員としてSuFExクリックケミストリーのケミカルバイオロジーおよび創薬化学への応用研究に携わる。2022年5月よりニューヨーク、アルバートアインシュタイン医学校にてPIとして研究室を立ち上げる。研究室ホームページ:skitalab.com。北村研では創薬に興味のある化学者、ケミカルバイオロジスト、計算化学者を募集していますので、お気軽にメールしてください:seiya.kitamura@einsteinmed.edu。藤井郁雄(ふじい いくお)1956年山口県生まれ。日本スクリプス会代表(西日本)1989年よりスクリプス研究所Lerner/Janda研で博士研究員として、抗体酵素やファージ抗体ライブラリの研究に携わる。1991年に帰国し、蛋白工学研究所(主任研究員)、生物分子工学研究所(部門長)を経て、2003年、大阪府立大学大学院理学系研究科 教授。2022年3月に定年退職(名誉教授)し、4月より大阪公立大学研究推進機構 特任教授。抗体酵素の研究で培われた進化分子工学の知識と技術を基盤として、ヘリックス-ループ-ヘリックス構造をもつ分子標的ペプチドの開発を行っており、抗体に代わる新しい創薬モダリティとして期待されている。Copyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japanステム手帖-19

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